ニール・ジョーダン監督の『ことの終わり』は、戦後間もない1946年のロンドンから物語が始まる。作家のベンドリックスは、再会した旧友ヘンリーから彼の妻サラが浮気しているらしいと相談を持ちかけられ、心中穏やかではいられなくなる。
というのも彼はかつてサラと愛人関係にあったからだ。その不倫の恋は戦争の最中、44年の夏に突然終わりを告げた。情事の後で二人がいた建物が爆撃を受け、気絶していた彼が意識を取り戻すとサラは消え去っていた。
そんな過去があるため、彼女を忘れられないベンドリックスは、探偵に調査を依頼し、彼女の日記を手に入れるが…。
監督がニール・ジョーダンだと思うと、やはり落胆せざるをえない。この作品が一見いい映画のように見えるのは、まず何よりもグレアム・グリーンの原作、そのストーリーの持つ力のおかげだ。
それに加えて俳優やロケーション、マイケル・ナイマンの繊細な音楽も確かに魅力的ではあるが、だからといって「映画」として優れていることにはならない。ジョーダンは原作を完全に映画的な表現に置き換えることができず、半端なものにしている。
それが最も明確に表れているのが、ベンドリックスがサラの日記を読む場面だろう。ここで彼は、なぜサラが唐突に彼らの関係を終わりにしたのか、その理由をついに知ることになる。
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