[ストーリー] 1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしている米国人青年ライダルが、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスターとその妻コレットとめぐり合う。リッチで洗練された夫妻にたちまち魅了されたライダルは、彼らのガイドを務め、楽しい夕食のひとときを共にする。ところがその夜、チェスターがホテルの部屋に現れた探偵を殺害し、ライダルがその後始末を手助けしたことから3人の運命は激変。
実はチェスターは大勢の投資家を欺き、大金を奪った詐欺師だったのだ。船とバスを乗り継ぎ、偽造旅券が届くクレタ島へ向かう道中、ライダルはコレットと親密な関係となり、嫉妬心に駆られたチェスターは平常心を失っていく。やがて警察の捜査網にも追いつめられた3人は、後戻りできない破滅への道を突き進んでいく――。[プレスより]
『ギリシャに消えた嘘』は、90年代後半から脚本家として活躍してきたホセイン・アミニの監督デビュー作だ。原作はパトリシア・ハイスミスの『殺意の迷宮』。これまでアミニが脚本を手がけてきた映画には共通点がある。『日蔭のふたり』(96)、『鳩の翼』(97)、『サハラに舞う羽根』(02)といった初期の作品から、比較的最近の『ドライヴ』(11)まで、三角関係やそれに類する男女の複雑な関係が鍵を握る物語が目立っているのだ。
この『ギリシャに消えた嘘』もまた、チェスターとコレットというアメリカ人の上品なカップルと、同じくアメリカ人でツアーガイドをしている青年ライダルの三角関係が鍵を握る。三者を演じるヴィゴ・モーテンセン、キルステン・ダンスト、オスカー・アイザックがそれぞれに個性を発揮し、ただならぬ緊張感が生み出される。それはまさにアミニの世界といえるが、後半でその図式が大きく変化する。
アミニ自身もそれは自覚している。プレスのなかに彼の以下のようなコメントがあるからだ。「当初、僕はこの物語がテセウス、アリアドネ、ミノタウロスの愛の三角関係のようなものだと考えていた。しかし徐々にゼウスとクロノスの物語に近く、一人前の男になるために父親を殺さねばならない息子が物語の着想ではないかと思うようになったんだ」 |