ロバート・フランクは、映画作家よりも写真家としてよく知られているのではないかと思う。彼が1958年に発表した写真集『The Americans』は、ウィリアム・クラインの『New York』とともにアメリカの現代写真に多大な影響を及ぼしてきた。しかし、その50年代末にすでに彼は映画作家としての活動を開始し、ビートニクのヒーローたちをとらえたデビュー作『Pull My Daisy』(59)は、ビート・ムービーの傑作として熱狂的な支持を集めている。
そして、フランクのそんな魅力を見事に吸収し、自分のものにしているのが、ジム・ジャームッシュだ。彼が、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』をフランクに捧げ、敬愛しているのはよく知られている。ちなみに昨年(93年)来日したジャームッシュにフランクのことを尋ねたら、彼は『Pull My Daisy』のことを、最も偉大なアメリカ映画の一本にして、ビート・ムービーの最高傑作と賞賛していた。