[ストーリー] 両親が放牧する土地を求め、より奥地の草原に移住しているため、兄のバーテルは祖父のもとで暮らし、弟アディカーは学校の寮に住んでいる。兄は弟が母親の愛情を独り占めしていると思い込み、弟は兄ばかりが目をかけられていると感じ、互いに嫉妬し合っている。
夏休みが来ても父が迎えに来なかったことから、アディカーは拗ねる兄バーテルを説得して父母を探すため、2人きりの旅に出る。広大な砂漠をラクダにまたがり、干上がってしまった河の跡を道しるべに、ひたすら荒野をたどって行く――。
痩せて枯れてしまった大地、見捨てられた廃墟、そして崩壊した遺跡、回廊の変わりゆく風景は、光り輝いた土地が工業化のために消滅し、伝統が新しい社会へと変貌していく様子をまざまざと見せつける。
そして、いつしか2人の旅は、彼ら《ユグル族》としてのアイデンティティーの探求へと変わっていく――。[プレスより]
『夏至/The Summer Solstice』(06)、『老驢馬/The Old Donkey』(09)、『白鶴に乗って』(12)のリー・ルイジュン監督の新作です。
レビューのテキストは準備中です。簡単に感想を。舞台は中国北西部“河西回廊”、兄弟の旅を通して、失われたユグル族の歴史に光をあてるとともに、生態移民の背景、砂漠化の現実を映し出す作品にもなっています。そういう意味では、生態移民と関わりを持つワン・チュアンアン監督の『トゥヤーの結婚』(06)と比較してみも興味深いです。さらに、池谷薫監督がチベットの焼身抗議に迫ったドキュメンタリー『ルンタ』(15)でも、生態移民の問題が取り上げられていて、やはり接点を感じます。
「ニューズウィーク日本版」の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。お読みになりたい方は以下リンクからどうぞ。
● 井戸は干上がり、草原は枯れる中国西部。砂漠化とともに失われる価値観
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