光のノスタルジア
Nostalgia de la Luz / Nostalgia for the Light Nostalgia for the Light (2010) on IMDb


2010年/フランス=ドイツ=チリ/カラー/90分/ヴィスタ/
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(初出:「ニューズウィーク日本版」2015年10月2日更新)

 

 

アタカマ砂漠とメタファーを通して
炙り出される南米チリ・弾圧の歴史

 

[概要] 塩と風から成る、時のない広大なアタカマ砂漠。火星によく似た風景が広がっている。動くものはなにもない。だが神秘的な過去の痕跡に満ちている。2000年以上前の村の廃墟があり、19世紀の鉱夫たちがそのままにした列車が、砂の中に打ち捨てられている。空から落下した宇宙船のようなドーム型の建物には、天文学者たちが滞在する。あちこちに遺体が埋もれ、夜には眩い銀河が砂の上に影を落とす。

 チリ北部、太平洋とアンデス山脈の間を走るアタカマ砂漠は、世界中から天文学者が集う場所である。世界で最も乾燥したこの地が、大気の揺らぎや湿気を嫌う天文観測に極めて適しているからだ。一方で、灼熱の太陽が照りつけるアタカマ砂漠は、古代人のミイラや、遭難した探検者、銅や硝石の採掘鉱夫たちの亡骸が、手つかずに残っている場所でもある。そしてまた、独裁政権下で政治犯として捕らわれた人々の遺体もここに埋まっている。

 生命の起源を求めて、天文学者たちが遠い銀河を探索するかたわらで、行方不明になった肉親の遺骨を捜して、砂漠を掘り返す女性たち――チリを代表するドキュメンタリー映画監督パトリシオ・グスマン監督が、重力のようにわれわれを捉えて離さない“記憶”に焦点を当て、壮大な宇宙の映像とともに撮影した作品。[プレス参照]

 「ニューズウィーク日本版」で筆者が担当するコラム「映画の境界線」で本作を取り上げました。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。

数々の映画祭で絶賛された、南米ドキュメンタリーの巨匠の2本の新作|『光のノスタルジア』『真珠のボタン』


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/編集   パトリシオ・グスマン
Patricio Guzman
撮影 カテル・ジアン
Katell Djian
編集 エマニエル・ジョリー
Emmanuelle Joly
音楽 Miguel Miranda, Jose Miguel Tobar
天文写真 ステファン・ガイザード
 
◆キャスト◆
 
    ビクトリア・サアベドラ(愛する者を探す女性)
Vicky Saaveda
  ビオレッタ・ベリオス(愛する者を探す女性)
Violeta Berrios
  ラウタロ・ヌニェス(練達の考古学者)
Lautaro Nunez
  ガスパール・ガラス(若き天文学者)
Gaspar Galaz
  ミゲル・ローナー(記憶の建築家)
Miguel Lawner
  ルイス・エンリケス(アマチュア天文学者)
Luis Henriquez
  バレンティナ・ロドリゲス(星の娘)
Valentina Rodriguez
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(配給:アップリンク)
 

 

(upload:2015//)
 
 
《関連リンク》
パトリシオ・グスマン 『真珠のボタン』 レビュー ■
パブロ・ラライン 『NO』 レビュー ■

 
 
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