[概要] 2011年、アメリカの多くの美術館で展示されていた大量の絵画が、贋作であることが発覚した。この事件は極めて特殊な贋作事件で、一人の男が精巧な贋作を100点以上制作し、法外な金額で売ることができるにも関わらず、それらを無償で寄贈していたのだ。
男の名はマーク・ランディス。彼は長年にわたり、15世紀のイコンから、ピカソ、マグリット、ディズニーまで、幅広いスタイルの絵画を模倣し続けてきた。そして“慈善活動”と称し、神父など様々なキャラクターに扮して、それらの贋作を美術館に寄贈してきたのだ。
しかし、美術館職員のマシュー・レイニンガーが、それらの作品群が贋作であることを発見する。ニューヨーク・タイムズやフィナンシャル・タイムズ、テレビなどのメディアが、このセンセーショナルな事件を大きく取り上げ、ランディスを追いかけた。FBIも捜査に乗り出すが、彼は金銭を一切受け取っていなかったため、罪には問われなかった。
結局、贋作活動をやめさせようとするレイニンガー達を無視して、ランディスは“慈善活動”を続けていた。しかし、レイニンガーの元同僚のアーロン・コーワンが思いついた一つのアイデアによって、彼の運命は新たに動き出す――。
MoMAでの勤務経験を持つグラウスマンと画家として活動していたカルマンという美術界にバックグラウンドを持つ2人のドキュメンタリー作家が、謎の贋作画家マーク・ランディスの素顔に迫った本作は、ナショナル・ボード・オブ・レビューのトップ5ドキュメンタリーに選出されるなど、全米で大きな話題となった。[プレス参照]
「ニューズウィーク日本版」で筆者が担当するコラム「映画の境界線」で本作を取り上げました。記事がお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。記事のなかで書いたように、スティーヴン・スピルバーグの『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と比較してみると、さらに興味深くなる映画です。
● 30年間贋作を制作し、資産家や神父を装って美術館に寄贈し続けた男|『美術館を手玉にとった男』
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