ビースティ・ボーイズ
Beastie Boys


2008年/韓国/カラー/123分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

金が支配する世界のなかで男女関係に亀裂が走るとき
男たちの心の奥に潜んでいた軍事主義の暴力が露になる

 

[ストーリー] 流行の先端をいく街、清淡洞(チョンダムドン)にあるホストクラブ。入店3ヵ月目にして早くも店のエースとなったスンウは、あくまで金のために仕事をしているつもりだったが、客として出会ったジウォンに惹かれていく。そして、彼女と同棲をはじめた彼は、求められるままに金を貢ぎつづけるが、次第に不満がつのりだす。

 一方、店の支配人格であるジェヒョンは、スンウの姉ハンビョルと同棲していたが、ギャンブル癖というどうにもならない問題を抱えていた。多額の借金を背負い、常に取立て屋に追われる彼は、もはやハンビョルの金をあまり当てにできないとわかると、別の女性ミソンに乗り換えて金を引き出そうとする。

 『ビースティ・ボーイズ』は、『許されざるもの』(05)でデビューを果たした韓国の新鋭ユン・ジョンビンの長編第2作になる。若者たちの兵役とその後の関係を描いた『許されざるもの』で、ユン監督が炙り出そうとしたのは、内面化された軍事主義だった。

 『韓国フェミニズムの潮流』では軍事主義という概念が以下のように説明されている。

「集団的暴力を可能とする集団が維持され力を得るために必要な、いわゆる戦士としての男らしさ、そしてそのような男らしさを補助・補完する女らしさの社会的形成とともに、このような集団の維持・保存のための訓練と単一的位階秩序、役割分業などを自然のことと見なすようにするさまざまの制度や信念維持装置を含む概念」

 『許されざるもの』のドラマは、その軍事主義が軍隊という世界だけではなく、その後も主人公たちを呪縛しつづけていることを物語っていた。

 これに対して、流行の街にあるホストクラブを主な舞台に男女の関係を描く『ビースティ・ボーイズ』は、前作とはまったく違う世界を描いているように見える。確かに社会は変化しつつある。社会を動かしているのは、軍事主義を支えるような政治的なイデオロギーではなく、経済的な力であり、人間の価値は、性別に関係なく、金で決まる。

 この映画のふたりの主人公であるスンウもジェヒョンもそのことはわかっているはずだ。スンウの母親はかつて宝石店を経営し、彼も裕福な生活を送っていたが、いまでは金を稼ぐためにホストとして女性に奉仕しなければならない。自分より金を稼ぐことができるジウォンを独占するためには、さらに金が必要になる。ジェヒョンも、借金を返済するためには、金のある女性たちに取り入らなければならない。

 しかし、金がうまく回らなくなるとふたりの態度ががらりと変わる。ジェヒョンは、ミソンが金をだすつもりがないとわかると、彼女の髪をつかみ、腹に容赦のない一撃を見舞う。スンウも、自分が貢ぐ金ではジウォンを思い通りにできないとわかると、彼女の髪をつかみ、顔に容赦のない一撃を見舞う。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   ユン・ジョンビン
Yoon Jong-bin
撮影 ゴ・ナクソン
Ko Rak-sun
音楽 キム・ホンジブ
Kim Hong-jip
 
◆キャスト◆
 
キム・スンウ   ユン・ゲサン
Yoon Kye Sang
ユ・ジェヒョン ハ・ジョンウ
Ha Jung-woo
ハン・ジウォン ユン・ジンソ
Yoon Jin-seo
キム・ハンビョル イ・スンミン
Lee Seung-min
チャンウ マ・ドンソク
Ma Dong-seok
ウォンテ ユ・ハジュン
You Ha-jun
ジフン クォン・セイン
Kwon Se-in
ミソン ユン・アジョン
Yoon Ah-jeong
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(配給:)
 

 先述した軍事主義には、「戦士としての男らしさ、そしてそのような男らしさを補助・補完する女らしさ」という表現があった。いまだ内面の深いところで軍事主義に呪縛されている彼らは、それに従わない女性たちに対して怒りを爆発させる。それぞれの女性に対するジェヒョンとスンウの感情はまったく違うものでありながら、暴力の本質はまったく同じなのだ。

《参照/引用文献》
『韓国フェミニズムの潮流』チャン・ピルファ、クォン・インスク他●
西村裕美編訳(明石書店、2006年)

(upload:2015/03/19)
 
 
《関連リンク》
ユン・ジョンビン 『群盗』 レビュー ■
ユン・ジョンビン 『悪いやつら』 レビュー ■
ユン・ジョンビン 『許されざるもの』 レビュー ■

 
 
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