日本でも人気のあるアキ・カウリスマキ監督が無声映画(音楽付き)に挑戦した新作「白い花びら」。この映画は、99年のベルリン映画祭やヴェネツィア映画祭などで、オリジナル音楽をライブ演奏する特別上映で好評を博した。
そして去る7月、日本でもこのライブ演奏による上映が行われた。音楽を手がけたフィンランドの作曲家アンシ・ティカンマキは、自ら創設したフィルム・オーケストラを率いて初来日し、ステージに立った。
そのティカンマキは、自分の音楽を言葉で語ることに違和感を持ちながらも、筆者の質問に対してあれこれ考え、答となる言葉を探す努力を惜しまない、愛すべき人物だった。そんな彼のコメントを整理してみると、彼が実に自然な流れのなかで現在に至っていることがわかる。
「フィンランドの田舎町で育ったわたしは、18歳のときにヘルシンキに出て、音楽学校で勉強を始めました。作曲、特に映画音楽に興味がありました。きっかけはエンニオ・モリコーネが音楽を手がけた「続・夕陽のガンマン」を観たことです。
でも具体的に映画音楽の道に進もうと思っていたわけではなく、わたしが最初に出したアルバムも映画音楽ではありませんでした」
しかし彼が作った音楽は、彼とアキ・カウリスマキを結びつけ、彼を映画音楽に導くことになる。
「アキがフィンランドのロック・バンドを題材にした映画を作っていたとき、そのバンドと親しかったわたしも撮影の現場に居合わせ、彼とミカに出会いました。それまではまったく彼らのことを知りませんでした。これは後でアキから聞いた話ですが、それから間もなく彼は、
わたしが少し前に出したアルバムの何曲かをラジオで聴いて、わたしの音楽とは知らずに局に問い合わせたそうです。ミカが『The Worthless』という映画の撮影に入り、音楽を担当する人間を探していたんです。それで、曲を作ったのがわたしだと知ったアキは、ミカに推薦し、映画音楽を手がけることになったのです」
アキが関心を持ったそのアルバムは、どのような作品だったのだろうか?
「インストの作品で、タイトルは『Finish Landscapes』。フィンランドのイメージを音楽で表現したアルバムで、いろいろな人からこれは一種の映画音楽だといわれました。実際、アルバムを出してから現在まで、そのなかの曲が映画やヴィデオに頻繁に使われてきました」 |