ジョディ・フォスターの兄であるバディが書いた『妹ジョディ・フォスターの秘密』のなかには、マーティン・スコセッシ監督のこんな言葉が引用されている。
「子役というのは、普通の人よりももろいんだ。だって、彼らには普通の子ども時代がないんだからね。だから、多くが成長の過程で絶望の深みにはまってしまうわけだ。でも、ジョディはそういうことをすべて乗り切ってきた。彼女は、逆境に陥れば陥るほど、よりよい人間に成長して戻ってくるのさ」
ジョディ・フォスターは、3歳でCMに出演し、やがてTVドラマや映画で子役として活躍するようになった。そんな彼女にとって大きな転機となったのが、13歳のときに出演したスコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』だ。家出してポン引きに拾われ、世の中を醒めた目で見つめる少女娼婦の存在は強烈な印象を残した。彼女はこの映画で、子役から脱皮する糸口をつかむと同時に、未来に繋がるテーマのヒントを得たように思える。
それは、他者に支配され、蹂躙される被害者の心理だ。彼女は、『ホテル・ニューハンプシャー』では、集団レイプによる心の傷を抱え、奇妙で危うい恋愛遍歴を重ねていくヒロインを演じて異彩を放ち、そして『告発の行方』では、やはり集団レイプに遭い、逆境に立たされながらも法廷で闘うヒロインを熱演し、アカデミー主演女優賞を受賞した。
ジョディは、『タクシー・ドライバー』と同じ76年にもう一本、『白い家の少女』に主演している。この映画も、いまから振り返ってみると、彼女が後に追求しだすもうひとつのテーマの原点になっていることがわかる。
町から離れた一軒家には少女と父親が越してきたはずだが、父親を見かけないのを不審に思った不動産屋や警官が家を調べようとする。しかし、重大な秘密を抱えた少女は、あらゆる手段を使って彼らを拒絶する。この父親の影を背負い、他者を寄せつけず、自分の世界を守り抜こうとする少女の存在は、演技派として成長を遂げた女優のなかで発展していく。 |