「直接的な答えになってないかもしれないですが、2001年に9・11があって、その後の社会はイラク戦争などずっとそれを引きずってきていますよね。それでいま思えばなんですけど、僕はその時『ドッグ・スター』(02)という映画を作っていて、現場に相米慎二さんが死んだという連絡があって、相米さん大好きだったんでとてもショックだったんですが、その翌々日、ちょうどクランクアップの日に撮影を終えて近くで飲んでいたら、テレビからあのツインタワーの映像が流れてきた。その数日の印象が強く心に残っています。
もうひとつ2007年のことですが、佐藤真さんの自殺がやはりショックだったですね。『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(06)を撮られて、あれもサイードという著名人を題材にしつつも、アメリカとイラクの問題に目を向け、やられたらやり返せでいいのかと問いかけている映画だと思うんです。佐藤さんは『阿賀に生きる』(02)の前から知っていて小川プロの撮影の手伝いに一緒に行ったりしていました。自分の知るそんな二人の監督が亡くなったことが、この映画に影響していると思っています」