アラン・パーカーの『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』で、死刑が確定し、その執行を待つ主人公デビッドは、自分の告白を雑誌に50万ドルで売り込み、女性記者を指名し、自分に起こったことを語りだす。この映画の衝撃は、彼が語る物語から浮かび上がる冤罪の可能性と結末で明らかになるもうひとつの真実とのギャップから生まれる。
「読んでみて非常によくできた脚本だと思いました。他にもたくさん脚本を読みましたが、気に入らなかった。ありきたりなハリウッド流の作品はやりたくなかった。そのなかで、この脚本は異質だった。優れたスリラーと深いテーマの両方に引かれたのです」
『バーディ』のフィラデルフィア、『エンゼル・ハート』のニューオリンズ、『ミシシッピー・バーニング』のミシシッピー。パーカーは、映画の舞台となる土地やその文化的、社会的な背景などを強く意識し、もうひとつのアメリカを描きだしてきた。
「まさにその通りだと思います。私が映画を作るときには、自分が知らない土地を選びます。その土地について学び、そこに暮らす人々について知りたくなるのです。だからロケハンで現地を訪れたときには、そうしたことを細かく調べ上げ、映画にどのように盛り込むかを考える。その土地の本質をとらえたい。私にとって場所はもう一人の主人公のようなものであり、とても重要なのです」
『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』の舞台はテキサス。映画は、テキサス州の州都オースティンとその周辺で撮影されている。
「オースティンは非常に興味深い場所です。テキサスというと、まず右翼やカウボーイが思い浮かんできます。確かにそういう人たちもまだかなり残っていますが、オースティンはまったく違う雰囲気を持っている。そこには大きな大学や政府機関があり、とても洗練されている。ただそこから5マイルも行けば、まったく違う世界が広がっているのです。それから、たとえばガソリンスタンドなど、何の変哲もないものに見えても、その土地の空気というものが漂っているので、意識して映画に盛り込んでいます」
テキサス州全般とオースティンの違いは、ドラマにも反映されている。ブッシュ現大統領の地元であるテキサス州は、死刑執行が最も多い州で、彼の6年間の州知事時代にも150人以上の刑が執行されている。この映画で、刑の執行を待つデビッドは、オースティンにあるテキサス大学の教授で、死刑廃止論者だった。大学教授デビッドは、死刑制度の是非を問うテレビ討論で、州知事から、現実に冤罪の死刑囚がいるのかと詰め寄られ、沈黙を余儀なくされる。
「私は死刑制度には反対しています。死刑が犯罪に対して抑止力を持たないというのも、理由のひとつですが、道徳的な観点から見ても、復讐のためにもうひとつの命を奪うことには賛成できません」
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