1984年に旧ソビエト連邦の構成国だったグルジア共和国で製作され、ペレストロイカの象徴となったテンギズ・アブラゼ監督の『懺悔』。ようやく日本公開されることになった幻の映画は、いま観ても新鮮であるばかりでなく、新たな意味を持って迫ってくる。
物語は、架空の地方都市で、長く権力を振るってきた市長ヴァルラム・アラヴィゼの訃報が流れるところから始まる。そして、葬式の翌日から、墓があばかれ、アラヴィゼ一族の屋敷に遺体が放置される事件が繰り返される。間もなくケテヴァンという女性が墓で取り押さえられる。彼女にとってヴァルラムは、両親を粛清、殺害した張本人だった。
この映画では、法廷に引き出されたケテヴァンが語る過去を通して、封印されたスターリン時代の真実が明らかにされていく。しかし、映画が批判するのは、時代だけではない。
注目しなければならないのは、懺悔≠ニいう映画のタイトルだ。懺悔するためには、過去と向き合うことが前提となる。だが、ケテヴァンがその証言を通して真実を明らかにしても、法廷に集まった人々は、過去から目を背けようとする。それでは新たな道は開けない。そして、歴史が繰り返されることになる。
チェチェン戦争の裏で糸を引くプーチン政権を告発した元FSB(ロシア連邦保安庁)中佐アレクサンドル・リトビネンコは、2006年に亡命先のイギリスで暗殺された。そんな彼が遺した『ロシア 闇の戦争』の序章には、こんな記述がある。
「歴史を振りかえればわかるように、ロシアはつねに最悪の選択肢を選びとってしまう」
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