懺悔
Repentance  Monanieba
(1984) on IMDb


1984年/ソビエト(グルジア)/カラー/153分/スタンダード/モノラル
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(初出:「CDジャーナル」2008年12月号、夢見る日々に目覚めの映画を83より抜粋、若干の加筆)

 

 

過去と向き合わなければ、未来は開けない

 

 1984年に旧ソビエト連邦の構成国だったグルジア共和国で製作され、ペレストロイカの象徴となったテンギズ・アブラゼ監督の『懺悔』。ようやく日本公開されることになった幻の映画は、いま観ても新鮮であるばかりでなく、新たな意味を持って迫ってくる。

 物語は、架空の地方都市で、長く権力を振るってきた市長ヴァルラム・アラヴィゼの訃報が流れるところから始まる。そして、葬式の翌日から、墓があばかれ、アラヴィゼ一族の屋敷に遺体が放置される事件が繰り返される。間もなくケテヴァンという女性が墓で取り押さえられる。彼女にとってヴァルラムは、両親を粛清、殺害した張本人だった。

 この映画では、法廷に引き出されたケテヴァンが語る過去を通して、封印されたスターリン時代の真実が明らかにされていく。しかし、映画が批判するのは、時代だけではない。

 注目しなければならないのは、懺悔≠ニいう映画のタイトルだ。懺悔するためには、過去と向き合うことが前提となる。だが、ケテヴァンがその証言を通して真実を明らかにしても、法廷に集まった人々は、過去から目を背けようとする。それでは新たな道は開けない。そして、歴史が繰り返されることになる。

 チェチェン戦争の裏で糸を引くプーチン政権を告発した元FSB(ロシア連邦保安庁)中佐アレクサンドル・リトビネンコは、2006年に亡命先のイギリスで暗殺された。そんな彼が遺した『ロシア 闇の戦争』の序章には、こんな記述がある。

歴史を振りかえればわかるように、ロシアはつねに最悪の選択肢を選びとってしまう


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   テンギズ・アブラゼ
Tenghis Abulaze
脚本 ナナ・ジャネリゼ、レゾ・クヴェセラワ
Nana Dzhanelidze, Rezo Kveselava
撮影 ミヘイル・アグラノヴィチ、ソロモン・シェンゲリア、ギア・ゲルサミア、ヴァレリ・シャヴェリ、グラム・サザグリシヴィリ
Mikhail Agranovich
 
◆キャスト◆
 
ヴァルラム・アラヴィゼ/アベル・アラヴィゼ   アフタンディル・マハラゼ
Avtandil Makharadze
グリコ イア・ニニゼ
Iya Ninidze
トルニケ メラブ・ニニゼ
Merab Ninidze
ケテヴァン・バラテリ ゼイナブ・ボツヴァゼ
Zeinab Botsvadze
ニノ・バラテリ ケテヴァン・アブラゼ
Ketevan Ablaze
サンドロ・バラテリ エディシェル・ギオルゴビアニ
Edisher Guiorgobiani
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(配給:ザジフィルムズ)
 

 

《参照/引用文献》
『ロシア 闇の戦争』アレクサンドル・リトヴィネンコ●
中澤孝之監訳(光文社、2007年)

(upload:2010/02/06)
 
《関連リンク》
アフタンディル・マハラゼ・インタビュー ■
アンドレイ・ネクラーソフ・インタビュー ■

 
 
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