リザとキツネと恋する死者たち
Liza, a rokatunder / Liza, The Fox-Fairy Liza the Fox-Fairy (2015) on IMDb


2014年/ハンガリー/カラー/98分/スコープサイズ/
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(初出:)

 

 

日本的エキゾティシズムとブラック・ユーモア
70年代ブダペストを舞台にしたハンガリー版『アメリ』

 

[ストーリー] 1970年代のブダペスト。元日本大使未亡人の看護人として住み込みで働くリザの心のよりどころは、日本の恋愛小説と、リザにしか見えないユーレイの日本人歌手、トミー谷。孤独な毎日を軽妙な歌声で元気付けてくれるが、リザは恋愛小説にあるような甘い恋に出会うべく、30歳の誕生日に未亡人に2時間だけ外出許可をもらう。

 だが、その間に未亡人が何者かに殺害されてしまう。刑事ゾルタンが捜査を命じられ、リザが恋した人間が“死者”となる奇怪な殺人事件が次々と起こる。その影にチラつくのはキツネの呪い。果たして孤独なリザに幸せはやってくるのか――。[プレス参照]

 CMディレクター及びプロデューサーとして活動しながら、短編映画を撮ってきたウッイ・メーサーロシュ・カーロイ監督の長編デビュー作です。

 映画を観てすぐに連想するのは、ジャン=ピエール・ジュネ『アメリ』。それに、日本的なエキゾティシズムとブラック・ユーモアを加味したような世界ですが、2作品を比較してみるとなかなか面白いです。

 アメリは、相手に気づかれないように他人を少しだけ幸福にするということを繰り返していきます。一方この映画では、日本の恋愛小説のような出会いを求めるリザと接点を持った男たちが、彼女も気づいていない邪悪な力によって、死者になっていきます。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   ウッイ・メーサーロシュ・カーロイ
Ujj Meszaros Karoly
脚本 バーリント・ヘゲドゥーシュ
Balint Hegedus
撮影 ペーテル・サトマーリ
Peter Szatmari
編集 Judit Czako
音楽 アンブルシュ・テヴィシュハージ
Ambrus Tovishazi
 
◆キャスト◆
 
リザ   モーニカ・バルシャイ
Monika Balsai
トミー谷 デヴィッド・サクライ
David Sakurai
居候刑事ゾルタン サボルチ・ベデ=ファゼカシュ
Szabolcs Bede Fazekas
ゾルタンの上司 ガーボル・レヴィツキ
Gabor Reviczky
ヘンリク Zoltan Schmied
カーロイ Antal Cserna
マルタ Piroska Molnar
インゲ Agi Gubik
ルドヴィク Lehel Kovacs
-
(配給:33BLOCKS)
 

 70年代のハンガリーは社会主義の時代で、劇中に登場するようなメック・バーガーというファストフードショップや雑誌のコスモポリタンなどはなかったはずですが、まったく意味のない虚構とも言い切れません。なぜなら、ハンガリーは東側の社会主義国のなかで、早くから市場経済の導入に積極的だったからです。

 日本の芸人トニー谷がハンガリーの監督にインスピレーションをもたらし、ユーレイ歌手トミー谷というキャラクターが生み出されるというのは、何とも不思議な感じがします。

 

(upload:2015/12/26)
 
 
《関連リンク》
ジャン=ピエール・ジュネ 『アメリ』 レビュー ■
ガーボル・ロホニ 『人生に乾杯!』 レビュー ■

 
 
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