ナイジェル・コール監督の『カレンダー・ガールズ』のもとになっているのは、1999年に世界初の“婦人会ヌード・カレンダー”を作り、センセーションを巻き起こした主婦たちの実話だ。
イギリスの田舎町に暮らす主婦のクリスとアニーは、変化のない毎日にうんざりしている。毎月開かれる女性連盟の会合は、自己啓発を謳っているものの、乳製品やブロッコリーに関するゲストのお堅いレクチャーには退屈するばかりだ。
しかし、アニーの夫が白血病で他界したことが転機となる。クリスは、傷心の親友を励ますため、女性連盟が毎年製作するカレンダーの収益で、彼女の夫が入院していた病院に寄付をすることを思い立つ。
もちろん、ありきたりのカレンダーでは、収益など高が知れている。だが、クリスは、女性連盟の品評会にスーパーで調達したケーキを出品し、受賞して平気な顔をしている度胸を持った女性であり、主婦たちのヌードという大胆な提案をする。当然お堅い連盟の支部長はその企画に猛反発する。そこで、戸惑っていたはずのクリスの仲間たちが、1月から順番に次々と立候補していく姿は実に痛快である。
完成したカレンダーで主婦たちは予想もしない成功を収めるが、この映画にはその代償もしっかりと描きだされている。彼女たちは、ハリウッドに招かれ、豪華な待遇に夢のような気分を味わう。だが、その夢には落とし穴がある。
クリスにインスピレーションをもたらしたのは、雑誌やカレンダーのピンナップだったが、主婦たちがヌードになったのは、あくまで自分たちにも何かができることを証明したかったからに過ぎない。ところが、アメリカの冷酷なショービジネスのなかで、いつの間にか彼女たちは商品とみなされ、虚しく消費されかけているのだ。
この厳しい現実は、性格が対照的なクリスとアニーの間に亀裂を生むが、彼女たちは、そんな苦い経験をすることで、カレンダーに刻まれた自分たちの輝きの意味を再認識していくのだ。 |