ブライトン・ロック
Brighton Rock


2010年/イギリス/カラー/111分/スコープサイズ/ドルビーデジタル
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(初出:)

 

 

自由への渇望とソシオパスの衝動が生み出す緊張

 

[ストーリー] 1964年、イギリスの海辺の町ブライトン。物語は、ギャング同士の縄張り争いで、10代のギャングである主人公ピンキーのボス、カイトが殺害されるところから始まる。ピンキーは、ボスを殺したヘイルをつけまわし、息の根を止めるが、海辺のカフェで働く若いウェイトレス、ローズに重要な証拠を握られてしまったことがわかる。そこでローズを誘惑し、自分に不利になる証拠や証言を封じるために彼女と結婚しようとする。ところが、ローズの雇い主で、殺されたヘイルの友人だったアイダが、ローズの異変に気づき、次第にピンキーを追い詰めていく。

 『ブライトン・ロック』は、ローランド・ジョフィ監督の息子で、これまで脚本家として活躍してきたローワン・ジョフィの監督デビュー作になる。原作は、グレアム・グリーンの同名小説だ。原作の時代背景は30年代末だが、映画では1964年に変更されている。

 1964年は、労働者階級やティーンエイジャーが台頭する時代であり、映画には、『さらば青春の光』と同じように、モッズとロッカーズの対決が盛り込まれる。そして、そんな背景が、ピンキーとローズを異なる意味で際立たせることになる。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   ローワン・ジョフィ
Rowan Joffe
原作 グレアム・グリーン
Graham Greene
撮影 ジョン・マシソン
John Mathieson
編集 ジョー・ウォーカー
Joe Walker
音楽 マーティン・フィップス
Martin Phipps
 
◆キャスト◆
 
ピンキー   サム・ライリー
Sam Riley
ローズ アンドレア・ライズブロー
Andrea Riseborough
アイダ ヘレン・ミレン
Helen Mirren
フランク・スパイサー フィリップ・デイヴィス
Philip Davis
フィル・コーカリー ジョン・ハート
John Hurt
コレオーニ アンディ・サーキス
Andy Serkis
ヘイル ショーン・ハリス
Sean Harris
ダロウ ノンソー・アノジー
Nonso Anozie
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(配給:)
 

 粗暴な父親に縛り付けられているローズは、カフェの窓から疾走する若者たちを眺めるばかりで、時代から取り残されている。彼女がピンキーに惹かれていく背景には、そんな焦燥感がある。ローズは、ピンキーが彼女の父親に支払う金によって自由を買おうとする。

 だが、ピンキーの場合は、彼女とはまったく違う。上の世代に反抗するのは、モッズやロッカーズと同じだが、ピンキーは彼らのようにグループで行動することがなく、ギャングの結束も乱し、誰も信じることなく常に孤立している。彼はソシオパス(社会病質者)に近く、60年代よりも現代を象徴しているように見える。

 筆者は2010年の東京国際映画祭でこの映画が上映されたときに来日したジョフィにインタビューする機会に恵まれたが、そんなピンキーの印象を伝えると、以下のような答が返ってきた。

「そういうふうに言っていただいてとてもうれしいです。“モノマニアック”ということですね。この言葉は、自己中心的でとにかく人と接することができない、相手が自分の目的に利用できる場合以外は、すべての関係を排除するような人間を意味するのですが、ピンキーはまさにそれだと思います。だからグループに属せないし、属したくもない。考えてみると、私たちはお互いが信じられなくなるようなパラノイアの時代に生きています。気をつけないと、私たちが向かっている世界をピンキーが表しているということになりかねません」

 この映画では、異なる欲望や衝動に駆り立てられるピンキーとローズの関係が、異様な緊張を生み出している。


(upload:2015/02/22)
 
 
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ローワン・ジョフィ 『リピーテッド』 レビュー ■
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