ぼくの大切なともだち
Mon Meilleur ami


2006年/フランス/カラー/96分/スコープサイズ/ドルビーデジタルDTS
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(初出:「eiga.com」2006年6月17日更新、若干の加筆)

モノだけを友とする美術商と
情報だけを友とするタクシー運転手の孤独

 パトリス・ルコントの新作『ぼくの大切なともだち』の導入部には、この監督のスタイルを逆手にとるような面白さがある。たとえば、『タンデム』や『列車に乗った男』などでは、男同士の友情や絆というものが、含みのある様々なエピソードを通してさり気なく描き出されていた。しかし、この新作の場合にはそういうわけにはいかない。

 はじまりは、美術商であるフランソワの誕生日を祝う食事会だ。フランソワは、会話の流れのなかで、そこに集まった人々がみな彼には親友がいないと思っていることを知る。納得できない彼は、ある賭けをしてしまう。10日以内に親友を披露しなければ、競り落とした高額な壷を失うことになるのだ。

 高を括っていたフランソワだが、実際に思い当たる友人を訪ねてみると、誰も相手にしてくれない。これまで仕事だけを生き甲斐にしてきたからだ。焦った彼は、誰とでも親しくなれるタクシー運転手ブリュノにノウハウを学ぼうとする。そんな姿は滑稽だが、もちろんただのコメディでは終わらない。

 ブリュノは、実は心に傷を抱え、クイズ番組に出場する夢を支えにしていた。骨董という「物」だけを友とするフランソワと、知識という「情報」だけを友とするブリュノ。そこには、勝ち組と負け組の孤独を見ることができる。

 ルコントは、ひねりを効かせた展開のなかで友情と愛について考察を加え、勝ち組と負け組の格差や異性愛者と同性愛者の壁を壊していく。この映画では、次第にルコントならではの繊細な人間ドラマが紡ぎ出されていくだけではなく、導入部のエピソードにも友情が潜んでいたことがやがて明らかになるのだ。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   パトリス・ルコント
Patrice Leconte
原案 オリヴィエ・ダザ
Olivier Dazat
脚本 ジェローム・トネール
Jerome Tonnerre
撮影 ジャン=マリー・ドルージュ
Jean-Marie Dreujou
編集 ジョエル・アッシュ
Joelle Hache
音楽 グザヴィエ・ドゥメルリアック
Xavier Demerliac
 
◆キャスト◆
 
フランソワ・コスト(美術商)   ダニエル・オートゥイユ
Daniel Auteuil
ブリュノ・ブーレー(タクシー運転手) ダニー・ブーン
Dany Boon
カトリーヌ(フランソワの共同経営者) ジュリー・ガイエ
Julie Gayet
ルイーズ・コスト(フランソワの娘) ジュリー・デュラン
Julie Durand
ブリュノの父 ジャック・マトゥー
Jacques Mathou
ブリュノの母 マリー・ピレ
Marie Pillet
ジュリア エリザベート・ブールジーヌ
Elisabeth Bourgine
エティエン・ドゥラモット アンリ・ガルサン
Henri Garcin
-
(配給:ワイズポリシー)
 

 


(upload:2010/08/06)
 
 
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