たとえば、前作『Hello Troll』の“Troll”は北欧神話に出てくる妖精、あるいは巨人を意味する。
そういえばall music guideでAlex Hendersonのレビューにちょっと面白い記述があった。スカンジナビア諸国のミュージシャンで、アルバムにHello Trollというタイトルがついていたら、その人の作品をよく知らない人たちは、デスメタル、ブラックメタル、バイキングメタル、フォークメタルなどに関わる音楽だと受け止めるというのだ。
最近、北欧神話で思い出されるものといえば、ケネス・ブラナーが監督した映画『マイティ・ソー』だ。メタルまではいかないが、やはりアメリカに引き寄せられると、神話というものが個や人間という枠組みにとらわれたものになるといえる。
リエンのトリオのアルバムは、『Hello Troll』からジャケット・アートが変化し、タイトルとアートと音楽の結びつきがより印象深いものになった。
『Hello Troll』のジャケットは、自然のなかにある見えないものを示唆している。では、『Natsukashii』のジャケットはどうだろうか。このアルバムは、タイトル・ナンバーの<Natsukashii>ではじまり、<Living in Different Lives>という意味深なタイトルの曲で終わる。
そこから想像をたくましくすると、やはり個や人間という枠組みを超えたところからこの世界を見ている部分が確実にあるように思える。それをごく自然に、特別なことではないものとして表現しているところが、この北欧のピアニストらしい。 |