『幸せになるためのイタリア語講座』や『17歳の肖像』で知られるロネ・シェルフィグ監督の新作『ワン・デイ 23年のラブストーリー』は、デイヴィッド・ニコルズの同名小説の映画化だ。
主人公は、作家を目指す堅実なエマと自由奔放で恋多き男デクスター。映画ではイギリスとフランスを舞台に、大学の卒業式で初めて言葉を交わした二人の23年に渡る歩みが、7月15日という「1日」だけを切り取って描き出される。もちろんその日に何か特別なことが起こるとは限らない。
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――シェルフィグ監督の作品は、『ウィルバーの事情(Wilbur Wants to Kill Himself)』(02)や『17歳の肖像』(09)、そして新作の『ワン・デイ〜』(11)と、舞台がデンマークの国外に設定された英語劇が増えています。『幸せになるためのイタリア語講座』(00)や『Hjemve』(07)などのデンマーク語の作品と英語劇では、違った刺激や魅力があるかと思います。その違いについて、監督がどのように考えているのか、まずお話していただけますか。
「英語はデンマーク語よりも表現が豊かで単語も多く、それだけでも英語で映画を撮る動機になります。私は監督として音に敏感ですが、母国語では表現できて、英語では表現できないこともあると思います。しかし、私の励みになるのは、実は素晴らしいアメリカ映画の多くをアメリカ出身ではない人が撮っているということです。
若い頃にラジオドラマの仕事をしたことがありましたが、音の方が(映像よりも)感情表現が豊かだと思いました。私は監督する時に音にとても気を遣いますし、音をとても大切にしています。また、ポストプロダクションで音の編集をするのが好きです。言語や台詞の音感は私にとってはとても大事です。それによって演技の説得力が変わります」
――『17歳の肖像』のような海外資本の英語劇で成功を収めることによって、その後に舞い込んでくる仕事のオファーの傾向がはっきりと変化したということはありましたか。
「実は『17歳の肖像』よりも、2000年に『幸せになるためのイタリア語講座』を撮った後の方が変化がありました。たくさんの国で公開されたのでいい経験ができましたし、より良い脚本に巡り会える機会が増えました。そういう意味では『17歳の肖像』も一助になったと思います。『ワン・デイ〜』もそうです。アン・ハサウェイというスターをキャスティングしたことによって、俳優エージェントの私に対する認識が変わりました。
特に素晴らしかったのは、その年のアカデミー賞では『アバター』のような作品があったなかで、『17歳の肖像』のような小作品が注目を浴びたことです。例えて言うならば、あの映画は競馬大会に大人の馬と並んで出場したポニーのような存在でした。この作品のおかげでいろんな楽しいことを経験できました。パーティーに出席する機会もたくさんありましたし、注目を浴びました」
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