――マクダルから『ハリー・ポッター』の物語をせがまれた母親は、その代わりにパイナップルパン王子の物語を語り、映画の最後では舞台がロンドンになります。テレビ・アニメに登場するウンチ怪人は、レイモンド・ブリッグスのスノーマンを連想させます。イギリスやイギリス文化については、どのようにとらえているのでしょうか?
アリス「小さい頃からイギリス式の教育を受け、イギリス英語を学んできたので、喋り方とか言葉の並び方、助詞とか助動詞の使い方など自然にイギリス式のものになったりします。絵本の挿絵の勉強をしていた時にも、先生がリバプール出身のイギリス人でした。その先生から大きな影響を受け、またイギリスの絵本をいろいろ紹介されました。それで好きな作家を見つけたのですが、なかでも特に好きなのがブリッグスで、テレビのシリーズに例のウンチ怪人が登場したのは、ブリッグスへのオマージュです」
ブライアン「イギリス文化からの影響はもちろんあると思います。小さい頃から香港がイギリスの統治を受けていたのだから、影響は受けざるを得ない。そういう意味で、英語を学び、英語を通して世界が広がったことについては、非常にありがたく思っています。ただ、映画をご覧になればわかると思いますが、物語やその中にある価値観は、東洋的なものであるとはっきり言えます。西洋の価値観ではない」
――青年のマクダルがジョージョー・マとロンドンで共演する場面ですが、貧乏ゆすりとクラシック音楽のコラボレーションというのは、単にユーモラスなだけではなく、ポストコロニアル的な《占有》と《転覆》を垣間見るような面白さがあると思うのですが…。
ブライアン「実はその場所がロンドンなのかどうか定かではない。ひょっとしたら、ロンドンタクシーが登場したから、ロンドンだと思われたのかもしれないですけど…」
――そうですね、タクシーの印象が大きいですね。そういう曖昧な設定の場合、アリスさんの方は、どのように解釈して、作業をしていたのでしょうか?
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