ブライアン・ツェー&アリス・マク・インタビュー
Interview with Brian Tse & Alice Mak


2006年 東京
マクダル パイナップルパン王子/McDull, prince de la bun――2004年/香港/カラー/78分/ヴィスタ/ドルビーSRD
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――マクダルから『ハリー・ポッター』の物語をせがまれた母親は、その代わりにパイナップルパン王子の物語を語り、映画の最後では舞台がロンドンになります。テレビ・アニメに登場するウンチ怪人は、レイモンド・ブリッグスのスノーマンを連想させます。イギリスやイギリス文化については、どのようにとらえているのでしょうか?

アリス「小さい頃からイギリス式の教育を受け、イギリス英語を学んできたので、喋り方とか言葉の並び方、助詞とか助動詞の使い方など自然にイギリス式のものになったりします。絵本の挿絵の勉強をしていた時にも、先生がリバプール出身のイギリス人でした。その先生から大きな影響を受け、またイギリスの絵本をいろいろ紹介されました。それで好きな作家を見つけたのですが、なかでも特に好きなのがブリッグスで、テレビのシリーズに例のウンチ怪人が登場したのは、ブリッグスへのオマージュです」

ブライアン「イギリス文化からの影響はもちろんあると思います。小さい頃から香港がイギリスの統治を受けていたのだから、影響は受けざるを得ない。そういう意味で、英語を学び、英語を通して世界が広がったことについては、非常にありがたく思っています。ただ、映画をご覧になればわかると思いますが、物語やその中にある価値観は、東洋的なものであるとはっきり言えます。西洋の価値観ではない」

――青年のマクダルがジョージョー・マとロンドンで共演する場面ですが、貧乏ゆすりとクラシック音楽のコラボレーションというのは、単にユーモラスなだけではなく、ポストコロニアル的な《占有》と《転覆》を垣間見るような面白さがあると思うのですが…。

ブライアン「実はその場所がロンドンなのかどうか定かではない。ひょっとしたら、ロンドンタクシーが登場したから、ロンドンだと思われたのかもしれないですけど…」

――そうですね、タクシーの印象が大きいですね。そういう曖昧な設定の場合、アリスさんの方は、どのように解釈して、作業をしていたのでしょうか?

 


アリス「私も誤解してるかもしれない、ロンドンかしら、よくわからない(笑)」

ブライアン「僕の仕事のやり方に関することですが、僕がまずいろいろ考えて、同僚たちに画を描くための資料を渡す。その関係には、面白いものがあるといえるかもしれません。僕が意識しているのは、さっきもお話したように、多様な解釈ができるようにすることです。この場面は、もともとはロンドンを避けて、ポルトガルにしようと思ったんです。そこで同僚に素材を渡すのですが、その中には南洋の風景なども含まれていました。画を描くにあたって、とにかくロンドンからは遠ざかろうと、そういうことをやっていたわけです」

――クラシック音楽と貧乏ゆすりの共演については、どういうところからインスピレーションを得たのでしょうか?

ブライアン「共演の場面ですが、映画の中では、ジョージョー・マになってますが、ヨーヨー・マかもしれない。これはみなさんすぐわかると思いますが。ヨーヨー・マは以前、バッハの音楽の可能性を探求していて、これはDVDで見ることができるはずですが、彼と異なる分野のアーティストが、バッハの音楽を題材にして、様々なコラボレーションをする作品がありました。その中に、ある庭師がバッハの音楽のコンセプトで庭をデザインし、ヨーヨー・マが演奏するという面白い組み合わせがあり、ヒントになりました。マクダルの貧乏ゆすりは、普通は下品で、とても身分の低い人間のよくない行為なのですが、こういう形で、非常に高尚なクラシック音楽のステージに登場させることができるのではないかと、その対比が面白いのではないかと思いました。共演するのは、必ずしも西洋のクラシック音楽ではなくてもよかったのかもしれませんが、その対比に面白さを感じて、このようにしたのです」

 
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(upload:2013/01/25)
 
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