[ストーリー] スウェーデン南部の田舎町オーモルに住むエリンとアグネスはまったく対照的な少女だった。14歳のエリンは、社交的で学校でも人気があり、楽しく生きているように見える。だが本当は、退屈な田舎町の日常にうんざりし、変化を求めていた。
一方、アグネスは内向的で、友だちもいなかった。そんな彼女はひそかにエリンに恋していた。アグネスの16歳の誕生日に、両親はパーティの準備をしてしまう。彼女は仕方なく招待状を学校に持っていくが、もの笑いの種になるだけだった。ところが、誰も来ないと思っていたパーティに、なぜかエリンが姉を連れて現われ、ふたりの運命は大きく変化していくことになる。
スウェーデンの異才ルーカス・ムーディソン監督の長編デビュー作です。このドラマでは、“レッテル”がキーワードになります。ムーディソンは、等身大の少女たちの姿を生き生きと描き出しているだけではなく、集団のなかでレッテルを貼られることに対して、鋭い考察を加えています。
レッテルは、アグネスの誕生パーティにやって来たエリンの軽率な行動から生まれます。退屈しのぎにやって来たパーティでエリンはアグネスに関心を持ち、接近していきます。しかしその前に、軽い気持ちでアグネスの部屋で発見したことを、友だちに話してしまいます。その結果、アグネスがレズビアンだという噂が広がり、アグネスは特別な目で見られ、嫌がらせも受けるようになります。
レズビアンというレッテルは、アグネスとエリンに対照的な影響を及ぼします。
アグネスにとってレッテルを貼られ、疎外されるのは、辛い体験のはずですが、そこにはある種の解放感もあり、開き直った彼女は打たれ強くなっていきます。もちろん、エリンとの間に信頼関係が生まれたことも要因になっています。これに対して、疎外されることに免疫のないエリンは、どんどん臆病になっていきます。自分を偽って、集団のなかに逃避しようとします。
この映画では、レッテルを貼られることが、自分を見つめ直す契機となり、ドラマに深みを生み出しています。そして、レッテルに対するムーディソン監督の視点は、その後の作品にも様々なかたちで引き継がれていくことになります。 |