『Marock(原題)』(05)でデビューしたモロッコ出身の女性監督レイラ・マラクシの長編第二作。舞台はモロッコのタンジール。実業家だった父親ハッサンの葬儀に集まった上流階級の家族たち、特に三人の娘と母親という女性を中心に物語が展開していく。三日間の物語は、伝統的な儀式に従って、三章に分けられている。
三人の娘たちは、異なる価値観、個性を持っている。夫婦関係が冷えかけているミリアムは、美しいことに執着し、整形によって夫の心をつかもうとする。メガネをかけた教師のケンザは、信仰から家族まで伝統的な価値観を信奉している。三女のソフィアは、親の反対を押し切ってアメリカ人と結婚し、ニューヨークで女優として活動している(ただし、彼女に回ってくるのは、女テロリストのような役ばかりのようだ)。そして、母親はある秘密を抱えている。
三姉妹が久しぶりに再会し、価値観や生活の違いから滑稽なやりとりを繰り広げる前半は、コメディ的な要素が際立つが、後半ではタブーといえる関係や行為などシリアスな問題にも踏み込む。そんな展開は、アメリカのオクラホマを舞台にしたジョン・ウェルズ監督の『8月の家族たち』(13)を思い出させる。
その『8月の家族たち』では、タブーに触れる物語が、リアリズムとは一線を画す“サザン・ゴシック・テール”のように表現されていた。マラクシ監督のこの作品でも、物語がいたずらに重くならないような工夫が施されている。父親役のオマー・シャリフは、ただ動かない亡骸を演じているだけではない。冒頭では、観客に自己紹介し、ときどき家族を見守るように姿を見せる。そんな彼の姿が見えるのが、ソフィアとともにアメリカからやってきた彼女の息子だけという設定も面白い。
※これは映画の概要と短い感想ですが、時間があるときにレビューを書きたいと思います。 |