演劇界・文学界で注目を集める本谷有希子の作品の映画化は、この冨永昌敬監督の『乱暴と待機』が、吉田大八監督の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』に続いて二度目となる。本谷ワールドの登場人物たちは、陰湿で狡猾で醜悪で、哀しく滑稽でもある。
映画『腑抜けども〜』に登場する姉妹の姉は、彼女の恥を漫画にして暴露した妹に執拗な嫌がらせで報復する。だが、この姉妹の関係はそれほど単純ではない。姉は自分に都合の悪いことを押しつけるために妹を必要としている。その一方で妹は姉が傲慢で邪悪になるほど創作意欲をかき立てられる。つまり、彼女たちはお互いに相手に依存しているのだ。
その男女は、なぜか兄妹を装い、深い関係になることもなく、覗く男と覗かれる女として共同生活を送っている。そして、久しぶりに再会した女同士の過去の因縁がきっかけとなって、夫婦と男女が複雑に絡み合っていく。閉塞感漂う六畳間で、あるいは二段ベッドと天井裏の間で、視線や憎しみ、欲望が交錯していくのだ。
夫婦を巻き込むこの男女の関係は実に興味深い。彼らは、それぞれに利己的な目的があって相手に依存しているわけでも、窃視行為の刺激に酔っているわけでもない。
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