お家をさがそう
Away We Go


2009年/アメリカ/カラー/98分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
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(初出:Into the Wild 2.0 | 大場正明ブログ 2011年3月17日更新、若干の加筆)

 

 

現代における“場所性”をめぐるロード・ムーヴィー

 

  かつては人が家庭を築き、子供を育てるにあたって“場所性”が重要な位置を占めていたが、いまでは人と場所の繋がりは確実に失われつつある。この映画に登場するバートとヴェローナのカップルも、場所に対する意識は希薄だ。

  バートと妊娠6ヵ月のヴェローナがコロラド州に住んでいるのは、バートの両親がそこに暮らし、子供が生まれたあとに何かと面倒をみてもらえると期待していたからだ。カップルはそれを理由にコロラド州に引っ越してきた。だから、(どこであるかは定かでないが)以前に住んでいた場所にも、いま住んでいる場所にも特別な愛着を持っているわけではない。

 これは余談になるが、コロラド州と住居ということで思い出されるのは、80年代から90年代にかけて、コロラドスプリングスを中心に50年代を再現するような郊外化が進行したことだ。エリック・シュローサーの『ファストフードが世界を食いつくす』に詳しく書かれているが、それまで南カリフォルニアに暮らしていた保守派の白人が、100万人という規模でロッキー山脈周辺の州に移動したという。

 バートの両親がそこに含まれるのかどうかは定かではないが、もしそうだとすればこの物語は出発点からさらに場所性が希薄な設定が準備されていたことになる。

 話をもどすと、両親を頼りにしていたバートとヴェローナに 予想外の出来事が起こる。孫の誕生を楽しみにしていたはずのバートの両親が、突然、ベルギーに移り住むと言い出す。その結果、彼らにはそこに住んでいる理由がなくなり、理想的な場所をさがして、アメリカ各地に兄弟や知人を訪ねてまわる旅が始まる。


◆スタッフ◆
 
監督   サム・メンデス
Joel Hopkins
脚本 デイヴ・エガーズ&ヴェンデラ・ヴィーダ
Dave Eggers & Vendela Vida
撮影監督 エレン・クラス
Ellen Kuras
編集 サラ・フラック
Sarah Flack
音楽 アレクシ・マードック
Alexi Mardoch
 
◆キャスト◆
 
バート   ジョン・クラシンスキー
John Krasinski
ヴェローナ マーヤ・ルドルフ
Maya Rudolph
グレイス カーメン・イジョゴ
Carmen Ejogo
グロリア ジェフ・ダニエルズ
Catherine O’Hara
ジェリー リアン・バラバン
Jeff Daniels
リリー アリソン・ジャネイ
Allison Janney
ローウェル ジム・ガフィガン
Jim Gaffigan
LN マギー・ギレンホール
Maggie Gyllenhaal
ロデリック ジョン・ハミルトン
John Hamilton
トム クリス・メッシーナ
Chris Messina
マンチ メラニー・リンスキー
Melanie Lynskey
コートニー ポール・シュナイダー
Paul Schneider
-
(配給:フェイス・トゥ・フェイス)

  カップルはコロラド州から、アリゾナ州のフェニックス、ツーソン、ウィスコンシン州のマディソン、カナダのモントリオール、フロリダ州のマイアミへと移動し、そこに暮らす理由を見つけ出そうとする。

  では、彼らが出会う家族は、場所性の代わりになにを基盤に家庭生活を営んでいるのか。マディソンに住むバートの幼なじみの女性は夫とともに東洋思想にかぶれ、コミュニケーションもままならない。モントリオールに住む大学時代のクラスメートの一家も、マイアミに住むバートの兄の一家も、夫婦が深刻な問題を抱え、崩壊しかけている。

  そしてカップルは最後にヴェローナの出身地であるサウスカロライナを訪れる。そこには空き家になったままの実家がある。この旅の終点はふたつの意味で興味深い。

  ひとつは、ヴェローナのなかにまだ故郷というもの、場所性に対する意識がわずかながら残っているということだ。映画の前半でカップルがツーソンに住むヴェローナの妹を訪ねたとき、姉妹の脳裏には、他界した両親やサウスカロライナの実家で過ごしたときの記憶がよぎっていた。

  もうひとつは、その実家が南部にあるということだ。もともと南部では、伝統的に土地に対する愛着が深く、他の地域と比べて、人と土地の繋がりが残っているといえる。様々な場所を訪れ、家族や家庭を見つめてきた彼らは、この終点でそこに暮らす理由としての場所性に目覚めつつあるようにも見える。


(upload:2012/01/29)
 
 
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