[Introduction] 「水俣を忘れてはいけない」―『ゆきゆきて、神軍』の監督・原一男が最新作で挑んだのは“水俣”だっ
た。日本四大公害病の一つとして知られる水俣病。その補償をめぐっていまだ裁判の続く中、ついに国
の患者認定の医学的根拠が覆られたものの、根本的解決には程遠い。原はその現実に20年間、まなざしを注いできた。これは、さながら密教の曼荼羅のように、水俣で生きる人々の人生と物語を顕した壮大な叙事詩である。
(プレス参照)
[Story]
第1部 病像論を糾す
川上裁判によって初めて、国が患者認定制度の基準としてきた「末梢神経説」が否定され、「脳の中枢
神経説」が新たに採用された。しかし、それを実証した熊大医学部浴野教授は孤立無援の立場に追いやられ、国も県も判決を無視、依然として患者切り捨ての方針は変わらなかった。
第2部 時の堆積
小児性水俣病患者・生駒さん夫婦の差別を乗り越えて歩んできた道程、胎児性水俣病患者さんとその家
族の長年にわたる葛藤、90歳になってもなお権力との新たな裁判闘争に賭ける川上さんの、最後の闘い
の顛末。
第3部 悶え神
胎児性水俣病患者・坂本しのぶさんの人恋しさと叶わぬ切なさを伝えるセンチメンタル・ジャーニー、
患者運動の最前線に立ちながらも生活者としての保身に揺れる生駒さん、長年の闘いの末に最高裁勝利を勝ち取った溝口さんの信じる庶民の力、そして水俣にとって許すとは?翻る旗に刻まれた怨の行方
は? 水俣の魂の再生を希求する石牟礼道子さんの“悶え神”とは?
ニューズウィーク日本版の筆者コラム「映画の境界線」で本作を取り上げています。その記事をお読みになりたい方は以下のリンクからどうぞ。
● 撮影15年、編集5年、原一男監督の新作|『水俣曼荼羅』 |