さらに、彼らとスポーツの関係には、前の世代との違いを垣間見ることができる。ジョーダンは学生時代にバスケットボールをやっていた。クーグラーが、「ロッキー」シリーズの熱烈なファンだった父親の影響を受けていることはよく知られているが、親子はフットボールでも深く結びついていた。クーグラーはフットボールの奨学金で進学したが、プロを目指すことを望んでいた父親の意に反して、映画の道を選択した。
ケイプルの場合は、父親がドラッグに溺れて家族に負担を強いたため、親子の間に溝があったが、それでもバスケットボールで結びついていた。ケイプルは本気でNBAを目指していたが、経済的な事情もあり、映画の道に進んだ。そんな彼の個人的な体験は、『The Land』に色濃く投影されている。彼はバスケットボールをスケートボードに置き換え、スポーツを通して4人の若者の絆を描いている。さらに、自分の家族の異なる側面が、4人の異なる家族すべての土台になっている。このスポーツと家族に対する洞察は、アポロとアドニス、ドラゴとヴィクター、ロッキーとロバートという親子の関係が重要な位置を占める本作にも引き継がれている。
本作でタッグを組んだジョーダンとケイプルには、その関係を物語る興味深いエピソードがある。ふたりは、本作の撮影中に素晴らしい映画やテレビドラマなりそうな黒人の歴史的人物についてよく語り合っていたという。そこで挙がった人物のひとりが、14世紀のマリ帝国で栄華を誇った王マンサ・ムーサだった。彼らは、アメリカの黒人という枠組みに縛られることなく、新たな黒人像を生み出そうとしている。
さらにジョーダンは、自分たちが夢を持つために、黒人の神話を創造することの重要性を強調している。そんな彼が『ブラックパンサー』で演じたキルモンガーは、オークランドのインナーシティの現実的な世界とアフリカの神話的かつ未来的な世界を結びつける役割を果たしているといえる。
そして、「クリード」の物語にも神話的な要素が盛り込まれている。神話学者ジョーゼフ・キャンベルが『千の顔をもつ英雄』で書いているように、神話的冒険は、「分離」、「イニシエーション」、「帰還」という過程をたどる。
「クリード」の物語は、アドニスがアポロの愛人の息子であるため、その冒険が二段階になる。前作では、孤児のアドニスがイニシエーションを経て、アポロの息子になる。そして本作では、結果として避けられない宿命を背負ったアドニスが、キャンベルが「自らが築き上げ暮らしている世界の破壊、その一部となっている自己の破壊」と表現するようなイニシエーションを経て、完全な帰還を果たすことになる。 |