[ストーリー] 時はロイヤル・ウェディングから6年後、グレースはいまだ王室のしきたりに馴染めずにいた。自分の居場所を見失ったグレースが、ヒッチコックからのハリウッド復帰の誘いに心を動かされたとき、モナコは最大の危機に直面する。フランスが過酷な課税を強要し、従わなければ「モナコをフランス領にする」という声明を出したのだ。
アメリカとヨーロッパ諸国を巻き込んだ、激しい国際政治の駆け引きのなか、グレースは自らモナコを救う“脚本”を書き上げる。外交儀礼からフランス語、話し方や微笑み方まで、厳しい特訓を受けて完璧な公妃の“役作り”を完了し、シャルル・ド・ゴール仏大統領を含む世界各国の指導者を招いたパーティという“舞台”を用意、そこでグレースは、“一世一代の大芝居”を演じ切ろうとしていた。[プレスより]
オリヴィエ・ダアン監督の『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』のヒロインは、伝説の女優グレース・ケリーだが、彼女の実人生に忠実な伝記映画を期待した人は不満を覚えるかもしれない。だが、事実にこだわらなければ、グレース・ケリーの境遇に想像力を刺激された物語として楽しめる。
物語はロイヤル・ウェディングから6年がたった1961年、アルフレッド・ヒッチコックがグレースの前に現われるところから始まる。彼は新作映画『マーニー』のシナオリを差し出し、彼女に出演を依頼する。王室で孤立している彼女の心は揺れる。しかし、モナコ公国存亡の危機に際して、公妃という大役を演じることに目覚める。
ハリウッドに復帰するのではなく、王室という現実のなかで演じることに目覚めるという展開は面白いが、それだけでは少し単純すぎる。
この映画の導入部には、グレースが政府の要人たちの輪に入って、政治的な発言をしたために白い目で見られ、夫のレーニエからも叱責される場面がある。そこでポイントになるのが、グレースを擁護するマリア・カラスとグレースの対比だ。
マリア・カラスはスキャンダルに見舞われても、歌うことが支えとなり、自分を表現することができる。だが、女優業を退いたグレースには、支えがない。だから、公妃を演じ切ることは女性として自立することにもつながる。
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