世代や国籍や生活環境など、まったく何の接点もない男女の交流を描いたけんもち聡監督の『今度の日曜日に』は、ほのぼのとしたドラマのように見えて、さり気なく鋭いユーモアが盛り込まれている。
韓国から日本に留学し、大学で映像の勉強をする女の子ソラは、自分と向き合うことができず、実習の課題も決められない。そこには、実は下心があって日本に来たものの、当てが外れてしまったという事情がある。
そんなソラにクラスメートが、韓国人から見た日本人というテーマを提案するが、彼女は、「私は韓国代表じゃありません」ときっぱりと拒絶する。そして、以前からその存在が気になっていた、わけありで掛け持ちのバイトに追われるオジサン・松元を題材に選ぶが、理由を問われてもなにも見えてないので説明のしようがない。
それでもとりあえず松元の生活に入り込んだ彼女は、ある日、松元と彼を訪ねてきた息子のためにチゲ鍋を作る。本場のチゲ鍋は親子には辛すぎるが、親子は気を使い我慢して食べる。そのとき、お互いの味覚の違いに無頓着なソラは、気づかぬうちに“韓国代表”になっているともいえる。
ヒロインは、松元という他者を通して自己に目覚めていくことになるが、筆者にはクライマックスの泣けるドラマよりも、登場人物たちの距離を巧みに描き出すユーモアが印象に残った。
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