映画の原作者リプマンの名前は懐かしい。80年代の終わりか90年代のはじめ頃、タマ・ジャノウィッツやメアリ・ゲイツキル、アン・タイラーといった女性作家とともに話題になっていた。この小説の映画化は、ヘレン・ハントにとって念願の企画だったらしい。彼女は、シガニー・ウィーバーが持っていた映画化権を、10年も待って手に入れたのだという。
しかし、映画を観ると原作のどこにそれほど思い入れていたのかがよくわからなくなる。筆者の記憶が正しければ、原作はヒロインと母親の関係を軸に展開していくはずだが、映画ではヒロインをめぐる三角関係が軸になり、母親の存在はおまけに近い。
しかもリプマンは、様々な出来事でストーリーに起伏を生み出すのではなく、登場人物たちの会話で読ませ、それをストーリーにしてしまうような作家なのに、映画では、ヒロインが夫から突然別れを告げられたり、妊娠によって新たな関係が暗礁に乗り上げたりと、ゴタゴタが積み重ねられていく。
ハント自身が脚色も手がけているというのに、彼女は一体なにをやりたかったのか。こういう映画を作りたかったのなら、原作がリプマンの小説である必要はないだろう。
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