いとしい人
Then She Found Me  Then She Found Me
(2007) on IMDb


2007年/アメリカ/カラー/100分/ヴィスタ/ドルビーデジタル
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(初出:Into the Wild 1.0 | 大場正明ブログ 2009年2月25日更新、若干の加筆)

 

 

監督デビューを果たしたヘレン・ハントは、
リプマンの原作のどこに惹かれていたのか?

 

 ジャック・ニコルソンと共演した『恋愛小説家』でアカデミー主演女優賞を獲得したヘレン・ハント。エリノア・リプマンの小説『見つかっちゃった』を映画化した『いとしい人』は、そんなハントの監督デビュー作であり、彼女は、製作、脚本、主演も兼ねている。

 ヒロインのエイプリルは39歳の小学校教師だ。年下の同僚ベンと結婚して10ヶ月、子供を求めていた彼女は、突然、夫から別れを告げられ、その翌日に養母が他界した上に、騒々しいテレビタレントのバーニスが実母だと名乗り出る。そんな波乱のなかで救いとなるのが、妻に逃げられた作家フランクとの出会いだが、急接近した矢先に、ベンの子供を身ごもっていることが判明する。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本/製作   ヘレン・ハント
Helen Hunt
原作 エリノア・リプマン
Elinor Lipman
撮影 ピーター・ドナヒュー
Peter Donohue
編集 パム・ワイズ
Pam Wise
音楽 デヴィッド・マンスフィールド
David Mansfield
 
◆キャスト◆
 
エイプリル・エプナー   ヘレン・ハント
Helen Hunt
フランク・ハート コリン・ファース
Colin Firth
バーニス・グレイヴス ベット・ミドラー
Bette Midler
ベン マシュー・ブロデリック
Matthew Broderick
フレディ ベン・シャンクマン
Ben Shankman
トルーディ・エプナー リン・コーエン
Lynn Cohen
-
(配給:アルバトロス・フィルム)
 

  映画の原作者リプマンの名前は懐かしい。80年代の終わりか90年代のはじめ頃、タマ・ジャノウィッツやメアリ・ゲイツキル、アン・タイラーといった女性作家とともに話題になっていた。この小説の映画化は、ヘレン・ハントにとって念願の企画だったらしい。彼女は、シガニー・ウィーバーが持っていた映画化権を、10年も待って手に入れたのだという。

 しかし、映画を観ると原作のどこにそれほど思い入れていたのかがよくわからなくなる。筆者の記憶が正しければ、原作はヒロインと母親の関係を軸に展開していくはずだが、映画ではヒロインをめぐる三角関係が軸になり、母親の存在はおまけに近い。

 しかもリプマンは、様々な出来事でストーリーに起伏を生み出すのではなく、登場人物たちの会話で読ませ、それをストーリーにしてしまうような作家なのに、映画では、ヒロインが夫から突然別れを告げられたり、妊娠によって新たな関係が暗礁に乗り上げたりと、ゴタゴタが積み重ねられていく。

 ハント自身が脚色も手がけているというのに、彼女は一体なにをやりたかったのか。こういう映画を作りたかったのなら、原作がリプマンの小説である必要はないだろう。

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(upload:2012/06/20)
 
 
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