[ストーリー] 夢と仕事を求めてアメリカに移り住む人は、第2次大戦後も後を絶たない。その入り口でもあるニューヨーク、1950年代のブルックリンにアイルランドからやってきたエイリシュは高級デパートで働き始めるが、新生活にとまどい、故郷からの手紙を読み返してはホームシックに。
やがて大学で学び、新しい恋と出会うと笑顔を取り戻し、驚くほど洗練された女性に変わっていくのだが――ある日、突然の悲報でアイルランドに戻った彼女を家族や友だちの優しさと、運命的な再会が待ちうけていた――。[プレスより]
[以下、レビューになります]
『BOY A』で評価されたジョン・クローリー監督の新作『ブルックリン』では、1950年代のアイルランドとニューヨークのブルックリンというふたつの世界をめぐって物語が展開していく。
アイルランドの田舎町で窮屈な生活を送るヒロインのエイリシュは、仕事と自由を求めてアメリカに渡り、高級デパートで働き始める。新天地では戸惑うことも多く、激しいホームシックにも襲われるが、彼女はそれを乗り越え、洗練された女性へと変貌を遂げ、トニーという恋人もできる。
しかしそんなある日、故郷から悲報が届く。帰郷した彼女を待っていたのは悲しみだけではなく、幼なじみのジムとの再会をきっかけに彼女の心は揺れていく。
この映画では、新世界と旧世界、ふたりの男性の間で人生の選択を迫られるヒロインを通して、アメリカ人になること、さらにはアメリカの夢とは何なのかが巧みに掘り下げられている。
アメリカの夢は必ずしも成功することを意味するわけではない。社会学者トッド・ギトリンは『アメリカの文化戦争』のなかでそれを説明するために、ジャーナリストのウォルター・リップマンの以下のような言葉を引用している。
「アメリカを統一するものは過去に対する憧れや畏敬ではなく、確かな目的意識と子孫にもたらす運命の強い自覚である。アメリカは常に国家であると同時に夢でもあった」 |