クニコ・プレイズ・ライヒ / 加藤訓子
Kuniko Plays Reich / Kuniko Kato (2011)


 
line
(初出:Into the Wild 2.0 | 大場正明ブログ 2011年6月10日更新、若干の加筆)

 

 

スティーヴ・ライヒと加藤訓子の相性について
ライヒへの様々なアプローチを聴き比べてみる

 

  国際的な舞台で活躍するパーカッショニスト、加藤訓子のニューアルバム『kuniko plays reich』は、タイトルが物語るように、ミニマル・ミュージックを代表するアメリカの作曲家スティーヴ・ライヒの楽曲集だ。

 アルバムに収められているのは3作品。そのうち、もともとギタリストのパット・メセニーを想定して作曲された<Electric Counterpoint>と、フルーティストのランサム・ウィルソンを想定した<Vermont Counterpoint>は、パーカッション向けにアレンジされている。

 ライヒ監修というお墨付きの作品だが、このふたりの音楽性は、とても相性がいいように思う。ライヒは小さい頃に最初にピアノを習い、それからドラムに興味が移り、それがアフリカの打楽器やガムランへとつながっていった。

 加藤訓子も最初にピアノを習い、アフリカに起源を持つマリンバの魅力に目覚め、ドラム缶を楽器として再利用するような独自の世界を切り拓いてきた。

 ところで、ライヒの楽曲は様々なアーティストによってコンスタントに取り上げられているが、特にこの数年、その傾向が目立っていたような印象がある。

 <Electric Counterpoint>だけに限っても、たとえば、カナダのギター・アンサンブルであるForestareの『Forestare』(2007)とか、Powerplantの『Electric Counterpoint』(2008)とか、スペインのギタリスト、Jose Luis Bieitoの『Reflections』(2009)とか、Andrew McKenna Leeの『Solar/Electric』(2009)などが思い出される。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆
01.   Electric Counterpoint Version for Percussions - Movement I: Fast
02. Electric Counterpoint Version for Percussions - Movement II: Slow
03. Electric Counterpoint Version for Percussions - Movement III: Fast
04. Six Marimbas Counterpoint
05. Vermont Counterpoint Version for Vibraphone

◆Personnel◆

Kuniko Kato - percussions

(Linn Records )
 
 
 
 
 

 そうした作品群のなかに、『kuniko plays reich』と対比してみると面白いアルバムがある。ひとつは、ブルガリア出身のパーカッショニスト、スヴェト・ストヤノフ(Svet Stoyanov)の『Percussive Counterpoint』(2008)だ。このアルバムでは、マリンバで<Electric Counterpoint>をやっている。ちなみに、加藤訓子は、スティールパン、マリンバ、ヴィブラフォンを組み合わせている。

 そしてもうひとつが、マリンバとコンピュータを組み合わせたりするナサニエル・バートレット(Nathaniel Bartlett)の『Precipice: modern marimba』(2006)。このアルバムでは、マリンバで<Vermont Counterpoint>をやっている。ちなみに、加藤訓子のヴァージョンはヴィブラフォンだ。

 ストヤノフやバートレットの表現には、クラシック〜現代音楽という背景を強く感じる。それは、彼らのアルバムの他の曲も聴いているからかもしれないが、どちらかといえば響きが硬質で、新たな地平を切り拓くために、歴史的なもの、伝統的なものを解体しようとするベクトルを感じる。

 加藤訓子の <Electric Counterpoint>を聴いて最初に連想したのは、韓国のサムルノリだ。彼らの音楽では四つの異なる打楽器が響き合いながら、そこに磁場が生まれ、引き込まれていく。加藤訓子の場合も、スティールパン、マリンバ、ヴィブラフォンが響き合い、多様なうねりのなかで磁場が生まれ、なにかを解体するのではなく、プリミティヴな空間が広がっていく。


(upload:2012/01/28)
 
 
《関連リンク》
Kuniko Kato (加藤訓子) official site ■

 
 
amazon.co.jpへ●
 
ご意見はこちらへ master@crisscross.jp