アガペー:EP / ベアーズ・デン
Agape / Bear’s Den (2013)


 
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(初出:)

 

 

ロンドン出身の注目のフォーク・ロック・バンド
誠実な言葉で独自の世界観が凝縮されたファーストEP

 

 ベアーズ・デンは、ロンドン出身のフォーク・ロック・バンドです。メンバーは、アンドリュー・デイヴィー(lead vocals, guitar)、ケヴィン・ジョーンズ(drums, bass, vocals, guitar)、ジョーイ・ヘインズ(banjo, guitar, vocals)の3人で、2012年に結成されました(2016年のはじめにヘインズが脱退し、現在は2人組です)。

 彼らの魅力は、宗教的な視点も盛り込まれた誠実な歌詞と、そんな歌詞と響き合う繊細で表情豊かなハーモニーといえます。そのサウンドではジョーイ・ヘインズのバンジョーが表現の幅を広げ、フォークとオルタナ・カントリーの狭間で独自の世界を切り拓いているともいえます。そこらへんは、筆者が好きなミシガン出身のフロンティア・ラッカスに通じるものがあります。

 ソングライティングを手がけるアンドリュー・デイヴィーは、初期の頃のインタビューで、ボブ・ディラン、レナード・コーエン、ボニー“プリンス”ビリーの3人をソングライティングのヒーローに挙げていました。

 『アガペー』は、ベアーズ・デンのファーストEPです。デイヴィーは、家族と喪失をめぐるテーマを掘り下げていると語っています。また、“アガペー”や“イサク”というタイトルだけでも、宗教的な視点がインスピレーションの源になっていることがわかります。


◆Jacket◆
 
◆Track listing◆

01.   Agape
02. Isaac
03. Mother
04. When You Break
05. Year Ago Today

◆Personnel◆

Bear's Den: Andrew Davie - lead vocals, electric guitar, acoustic guitar; Kevin Jones - vocals, drums, bass, guitar; Joey Haynes - vocals, banjo, guitar

(Communion records)
 

 但し、宗教的とはいっても、観念的な世界や神聖な世界に向かうわけではなく、しっかりと日常や家族を見つめています。<イサク/Issac>は、旧約聖書の「イサクの燔祭」がモチーフになっていますが、父親であるアブラハムの試練に注目するのではなく、父親に生贄にされかけた息子イサクの心情やその後の人生を想像するところから、独自の世界が紡ぎ出されています。

 つづく<マザー/Mother>には、その<イサク>と対比してみると興味深く思える世界があります。酔って母親に暴力をふるい、家族を捨てて家を出た父親と、その父親が残していった手紙で母親や姉妹のことを託された息子をめぐる物語には、父親と息子の絆だけでなく、家父長制についても考えさせるものがあります。

 アンドリュー・デイヴィーは、宗教的な視点を盛り込むことによって、通過儀礼なき時代における通過儀礼について独自の考察を加えているようにも思えます。“アガペー”は、キリスト教において、神の人間に対する無償の愛を意味しますが、<アガペー/Agape>という曲では、自己を確立するための通過儀礼と結びついているところがあります。

Bear's Den - Agape (EP) Album Lyrics
1.Agape (from Agape EP, 2013) Lyrics
2.Isaac (from Agape EP, 2013) Lyrics
3.Mother Lyrics
4.When You Break (from Agape EP, 2013) Lyrics
5.A Year Ago Today Lyrics

Bear's Den Lyrics provided by SongLyrics.com

 

(upload:2016/07/28)
 
 
《関連リンク》
Bear's Den official Site
Bear's Den | American Songwriter
ベアーズ・デン 『レッド・アース&ポーリング・レイン』 レビュー ■
ベアーズ・デン 『アイランズ』 レビュー ■
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