「マトリックス」のウォシャウスキー兄弟、「シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン、「マグノリア」のポール・トーマス・アンダーソンや「スリー・キングス」のデイヴィッド・O・ラッセル、「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズなど、
このところアメリカ映画界では新世代の監督たちの台頭が目立っている。彼らの背景、キャリア、主題や表現スタイルは多様であり、特に共通点があるわけではない。
ただひとつ言えるのは、映画における現実と虚構のとらえ方が変わってきているということだ。同じ虚構の世界であっても、これまでの監督たちは確固とした現実を前提として魅力的な虚構の世界を構築してきた。
しかし新世代の監督たちにとって現実はすでに虚構に満ち満ちている。だから現実という前提などおかまいなしに、最初から大胆に虚構を前面に押しだし、虚構を突き詰めることによって独自の現実をつかみとろうとする。
ひと昔前であればそういう感性が生かせる場所はインディーズに限られていた。ところがいまでは、虚構に満ちた現実を生きる観客の多くが、そういう感性についていくことができる。そして客が入るのであれば、
メジャーのスタジオもそれを無視することができない。だから個性的な若手の監督たちの台頭が可能になるのだ。
そんな背景を踏まえて筆者が注目したいのが、映画ファンと新人の映画作家と映画産業を結ぶようなオンライン・コミュニティである。
たとえばIFILM。このサイトでは、テレビ界などですでに活躍しているプロからまったくのアマチュアまで様々な作家の短編、長編が集められ、ユーザーはストリーム再生ソフトを使って実際にその作品を観られる。
観るだけでなく、点数をつけたり、感想や意見を書き込んだり、作家にコンタクトをとることもできる。その得点や評価は、映画産業やマスコミと繋がるIFILMのネットワークにフィードバックされ、作家に大きなチャンスをもたらす。
それから、ALWAYSi.comでも、同じようにインディーズ作品が、短編、長編、ジャンルなどで分類され、自由に観て、得点がつけられるようになっている。
こうしたサイトで人気を集めるような作品は、やはり冒頭で触れたような現代的な感性が印象に残る。たとえばテレビ界で活躍するプロのスタッフが作った10分足らずの短編『Sunday's Game』。この作品はIFILMで紹介されたとたんに問い合わせが殺到し、
そのプロデューサーがFOX2000とすでに契約を結んでいるということだが、確かに強烈なインパクトがあるブラック・コメディだ。 |