暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る / 山極寿一


2007年/日本放送出版協会NHK Books 1099
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(初出:)

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  ◆目次◆

    はじめに
  戦いの記憶
  暴力はどこからきたか
第1章 攻撃性をめぐる神話
01. 人類の進化史と攻撃性
  武器を持った猿人?
  「血塗られた歴史」という物語
  ローレンツの描く「人間性」
02. 狩猟仮説
  狩猟民は攻撃的か
  攻撃性は本能に直結しない
  祖型人類は狩猟民か
  人類が受け継いだものの探求
03. 暴力とは何か
  暴力への愛憎
  『キング・コング』という誤解
  異種への攻撃性と同種への攻撃性
  争いと暴力の原点を探る
第2章 食が社会を生んだ
01. 生物がともに生きる意味
  熱帯雨林に生きるということ
  霊長類始まりの地
  共生の森から
  種子散布という戦略
  霊長類と被子植物の共進化
02. 食べることによって進化した能力
  ゴリラのグルメ
  霊長類の始まりの姿
  葉食を可能にするメカニズム
  ヒトに受け継がれた類人猿の食性
03. 食物の違いがもたらすもの
  霊長類だけがもつ特徴
  食と体躯の多様な関係
  食の相違が左右する社会構造
04. ニッチとテリトリー
  熱帯雨林は食物の宝庫か
  鳥類のテリトリーと食虫類のテリトリー
  単独行動ペア型テリトリー
05. 昼の世界が集団生活を生んだ
  単独で暮らす夜行性のサルたち
  群れを作る昼行性のサルたち
  昼の世界がもたらすもの
06. 食物と捕食者の影
  真猿類は単独生活をしない
  食物の質と分布が「群れ」を生むのか
  身を守るために群れる
07. 食物をめぐる争いと社会性の進化
  テリトリーから群れへ
  優劣順位により争いを回避するニホンザル
  スクランブルとコンテスト、二つの競合のかたち
  食による社会理解の盲点
第3章 性をめぐる争い
01. インセストの回避と社会の進化
  サルたちのインセスト回避
  家族の起源
02. ペア生活の進化
  ペア生活のもたらす利益
  テナガザルのペア生活
  ペアと育児の関係
03. メスがオスの共存を左右する
  オスが単数の群れと複数の群れの違い
  出産期間かメスの数か
 性皮の有無が分けるもの
  人間集団の性の不思議
04. 母系と父系
  「血縁のないメス社会」という謎
  ニホンザルの血縁関係
  チンパンジーの社会性に迫る
  群れを移籍するメスゴリラ
  メスゴリラのいさかいとオスの仲裁
  霊長類の母系と父系
05. 娘と息子のゆくえ
  インセストの回避が霊長類の社会構造を動かす
  DNAが明かすサルたちの血縁
  チンパンジーとボノボの交尾回避
  ゴリラの旅立ち
  インセストタブーがもたらす共存
第4章 サルはどうやって葛藤を解決しているか
01. 優劣順位とは何か
  直線的に序列を決めるオスニホンザル
  メスニホンザルの家系順位
  群れの中の序列をどう読むか
02. 所有をめぐる争い
  「先行者優先の原則」の混乱
  序列意識の強いサルと弱いサル
03. 和解の方法
 サルのさまざまな和解
 チンパンジーは仲直りに積極的
 「ホカホカ」で緊張を抑えるボノボたち
 ゴリラが見つめ合う理由
 仲裁と介入はどう違うか
  三角関係のもつれをゴリラはどう収めたか
  弱者による仲裁
04. 食物を分配する類人猿
  ゴリラたちの食卓
  小さなゴリラが大きなゴリラをどかす
  仲間に食物を乞うチンパンジー
  ボノボの食物乞いは自己顕示なのか
  類人猿以外のサルたちの分類
  食物を分け与えるという戦略
05. 性の相性は分けられない
  異性をめぐる争いに解決策はあるか
  順位の低いオスほど交尾する?
  メスチンパンジーをめぐるオスたちの問題
  ボノボの不思議な発情
  オスたちの共存、ボノボ・チンパンジー・ゴリラ
  娘ゴリラと父親の別れ
  DNAが明かす父親ゴリラと息子の関係
第5章 暴力の自然誌――子殺しから戦争まで
01. 子殺しと社会の変異
  病理か必然か
  子殺しを生む社会
  メスゴリラが群れを出るとき
  子殺しの有無が社会構造を変える
  「子殺し」発生の波紋
  交尾と授乳の衝突
  父性という抑制装置
  人間社会は性と暴力をコントロールしているか
02. 人間はどう進化してきたか
  人類誕生の地から
  初期人類とチンパンジーの違い
  二足歩行と狩猟
  脳の進化と肉食
  食べられる獲物としての人類
  森を出た人類、森に残った類人猿
03. 家族と不思議な生活史
 二足歩行起源の諸説
  二足歩行が生む分配
  「多産」という人類の初期条件
  人類と子殺し
  祖型人類の社会構造を探る
  インセストタブーが「家族」を生んだ
  家族が分かち合うもの
04. 分かち合う社会
  狩猟民の惜しみなき分配社会
  贈与されるのは心理的負債か
  「分け与える」ことと「分かち合う」ことは違う
  類人猿と人類の分配の違い
  食物のもつ社会的な力
05. 所有と家族の起源
  家族という社会
  歌は言語に先立つ
06. 戦いの本質とは何か
  チンパンジーは戦争をするか
  拡大した共同体のゆくえ
  大量殺戮はなぜ生まれたのか
  狩猟的空間認知と農耕的空間認知
  起源への問いが戦争を呼ぶ
  霊長類としての人類の可能性
  参考文献
  おわりに

◆著者プロフィール◆

山極寿一――やまぎわ・じゅいち
1952年東京生まれ。京都大学大学院博士課程修了。理学博士。現在、京都大学大学院理学研究科教授。日本霊長類学界会長。専攻は霊長類社会生態学。人類進化論。長年にわたり、フィールドにて野生のニホンザルやチンパンジー、ゴリラの社会的行動の姿を追うとともに、その保護活動でも国際的に活躍する。


 

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