2010年に公開されたロドリゴ・コルテス監督の『[リミット]』には新鮮な衝撃を覚えた。このスペイン映画界の新鋭は、舞台を地中に埋められた棺桶の内部に限定し、出稼ぎ先のイラクで襲われたアメリカ人運転手のサバイバルを息詰まる臨場感で描き出してみせた。
新作『レッド・ライト』は、コルテスがそれ以前に書き上げていた脚本の映画化だが、この成功が追い風になったようだ。ロバート・デ・ニーロが出演することになった経緯はちょっとした笑い話になっていた。
「脚本を書いている時にはとにかくパワフルなキャラクターを生み出そうとしていただけで、当時の僕にはデ・ニーロが演じるなんて想像もできなかった。こういう脚本はハリウッドでも回覧されるけど、『[リミット]』のおかげで注目されたようで、僕のエージェントから「ボブ(ロバートの愛称)が興味を持つかもしれない」と連絡があった。でもボブと言われて思い浮かぶのはボブ・マーリー、ボブ・ゲルドフ、スポンジ・ボブくらいで一体誰なんだって思っていたら、なんとデ・ニーロだったんだ(笑)」
デ・ニーロが演じるのは伝説のカリスマ超能力者で、映画では彼を筆頭とする海千山千の超能力者と嘘を見破ろうとする科学者コンビの駆け引きがスリリングに描き出される。
しかし、本当の焦点になっているのは、必ずしも超能力の真偽ではない。コルテスは長編デビュー作『Concursante』で、テレビ史上最高額の商品(豪邸や飛行機など)を獲得したものの、その維持費を捻出するために泥沼にはまっていく男の姿を通して、金融界や消費社会を痛烈に風刺している。
この監督は、経済や超能力という題材を利用し、観点が異なる多用な視点を盛り込むことでこの世界の現実に迫ろうとする。
「僕は題材そのものではなく、経済や超能力という表層の裏に隠れている意味とか人間に興味がある。物事を様々な角度から見るために、個人的な意見を持たないようにしている。とはいえ映画ではまず観客がひとつの明確な視点を持つように仕向け、途中で別な視点に置き換えたりもする」 |