雪崩に襲われ、好意を寄せる女の子や仲間たち、教師を一瞬のうちに失い、九死に一生を得たジェイクとスティーヴン。17歳の親友同士である彼らのショックや苦痛には計り知れないものがある。彼らの心に癒し難い深い悲しみがあることはいうまでもない。しかし同時に、自分たちだけが生き残ってしまったことに対する罪悪感のような感情もあれば、自分たちが生きていることが単なる偶然に過ぎないような虚しさもある。死とか運命といったものに一方的に支配されることに抵抗したいという衝動にも駆られる。だからこそ、ジェイクは断崖から身を投げようとする。
「ニュー・イヤーズ・デイ」の魅力は、きわめて複雑で不安定なふたりの若者の心理を、予定調和ではない、意外性に満ちたストーリーで描きだすところにある。その発端となるのは、スティーヴンが提案する"12の約束"だ。その約束はどこか謎めいている。学校を燃やすとか、大きな動物を殺す、警官を殴るといった物騒な課題が並ぶかと思えば、突然、地球に緑を取り戻すというような妙に建設的な課題も飛び出してくる。その真意は終盤になって明らかになるが、それ以前にこの12の約束は、彼らの人生に思わぬ影響を及ぼしていくことになる。
この映画は、いままさにフランスに向けて旅立とうとするジェイクとスティーヴンが、電話で連絡を取り合っている場面から始まる。彼らがやっていることは連絡というよりは、SFまがいの交信であり、彼らは異世界のなかにいるつもりになっている。しかし悲劇的な事故の後、皮肉にもそんな現実との距離感は、ジョークではすまないものとなる。彼らは、これまでと変わらない世界を、異世界の住人であるかのような視座で見ている。そして、ドラッグによる幻覚を視覚化したシュールな映像や植林の場面に浮かび上がる奇妙な風景などが、そんな孤立感を強調していく。
しかし一方で、12の約束は、ジェイクとスティーヴンに対照的な作用を及ぼしていく。ジェイクにとっては、彼が学校に放火したり、ドラッグに手を出したりすることが、そのまま家族の生活にはね返る。鬱病に苦しむ母親の病状が悪化し、病院送りになるか、快方に向かうか、幼い弟や妹が保護者を失って、施設送りになるかどうかは、彼の肩にかかっている。そこでジェイクのなかでは、現実の生活の重みと12の約束の重みが次第に拮抗し、前者がまさるようになる。あるいは12の約束がきっかけとなって、現実の重みに目覚めていくということもできる。その結果、自分の家族やルアンダを失った家族と現実を分かち合うことができるようになる。
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