中越地震が発生し、全村避難で無人となった山古志村(現・長岡市)に、大きな注目を集めた犬がいた。地震の当日に三匹の子犬を出産したマリは、我が子を守って16日間を生き延び、無事に飼い主と再会した。
この実話を脚色した『マリと子犬の物語』は、父、祖父、兄と暮らす少女・彩が、犬を拾い、マリと名付けるところから始まる。やがて地震が発生し、家屋の下敷きとなった少女と祖父は、マリに励まされる。だが、救出された彼らは、マリと子犬を残して避難しなければならない。
しかし、山古志村に嵐が近づいていることを知った彩と兄の亮太は、自分たちだけでマリと子犬を助ける決意をする。
犬の親子の絆、人と犬の絆は感動的だが、この映画が描こうとするのはそれだけではない。人と土地の繋がりも重要なテーマになっている。彩の父親は、山古志村が長岡市に編入合併されるのを機に、長岡に転居しようと考えていた。そんな彼の心は、マリによって変化する。
彩がマリを拾うのは鎮守の森だ。そして、山古志村に戻ってきた彩は、やはり鎮守の森で、危機的な状況を生き延びたマリや子犬と再会する。つまりマリは、土地を守護する象徴的な存在でもあるのだ。 |