マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと
Marley & Me


2008年/アメリカ/カラー/118分/シネマスコープ/ドルビーSR・SRD・DTS
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(初出:47NEWS「花まるシネマ」2009年3月24日、若干の加筆)

 

 

マーリーは犬ではない

 

 コラムニストのジョン・グローガンが実体験を綴ったベストセラー・エッセイを映画化したデヴィッド・フランケル監督の『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』では、新婚のカップルが家庭を築き上げていく姿が、犬との関係を通して描き出される。

 ともにジャーナリストとして働くジョンとジェニーは、子育ての予行演習のつもりで子犬を飼うことにする。ところがそのマーリーは、他の犬や飼い主に飛びかかり、家具を噛みちぎり、何でも食べようとするとんでもなくおバカな犬だった。

 個人的なことをいえば、筆者は大の猫好きで、犬にはあまり興味がないが、だからこそ逆にこの映画を楽しめた。これは犬の映画であって、犬の映画ではない。主人公のジョンもドラマのなかで、マーリーのことを「犬ではない」と言っている。犬のしつけの基本は、まずなによりも主従関係を明確にすることだ。犬は飼い主に従わなければならない。だが、マーリーはまったく従わない。

 マーリーに手を焼いたジョンとジェニーが犬の訓練学校を訪れる場面では、その事実が強調されている。他の飼い主と犬の間にはしっかりとした主従関係がある。ふたりは、調教師の指導に従ってしつけをほどこそうとするが、マーリーはどちらにも従わない。そこで調教師本人が手本を示そうとするが、マーリーは彼女に飛びかかり、引きずりまわし、結局、追い出されることになる。

 この映画では、マーリーが主従関係を通して一家に貢献することはまったくないが、犬ではないことこそが意味を持つ。ジョンとジェニーは、仕事や出産、子育てなどをめぐって、何度となく壁にぶつかる。だが彼らは、自分たちの思い通りにはならないことでも、そこに大きな喜びがあるのを無意識のうちにマーリーから学んでいるのだ。


◆スタッフ◆
 
監督   デヴィッド・フランケル
David Frankel
原作 ジョン・グローガン
John Grogan
脚本 スコット・フランク、ドン・ルース
Scott Frank, Don Roos
撮影 フロリアン・バルハウス
Florian Balhaus
編集 マーク・リヴォルシー
Mark Livolsi
音楽 セオドア・シャピロ
Theodore Shapiro
 
◆キャスト◆
 
ジョン   オーウェン・ウィルソン
Owen Wilson
ジェニー ジェニファー・アニストン
Jennifer Aniston
セバスチャン エリック・デイン
Eric Dane
ミス・コーンブラット キャスリーン・ターナー
Kathleen Turner
アーニー・クライン アラン・アーキン
Alan Arkin
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(配給:20世紀フォックス映画 )
 

 

(upload:2009/06/10)
 
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