スペイン、イビサ島のクラブ・シーンに君臨した伝説のDJフランキー・ワイルド。彼の栄光と挫折が、関係者たちの証言や記録映像によって浮き彫りにされていく。クラバーを熱狂させたDJは、徐々に聴覚を失い、忽然と姿を消した。
『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』は、いわゆるモキュメンタリー≠フスタイルで展開していくが、それだけでは終わらない。映画の中に再現されるフランキーの過去が暴走を始め、そんなスタイルを逸脱していくのだ。酒とドラッグに溺れる彼の内面では、現実と幻覚の境界が崩壊するばかりか、栄光と挫折が同じように無意味なものとなる。
映画の冒頭で、人気絶頂のフランキーは、荊の冠をかぶったキリストとなってステージに現れ、特設プールに死のダイブをしてみせる。一方、聴力を失い、妻子にも逃げられた彼は、花火を巻きつけた冠(本人はダイナマイトだと思い込んでいる)をかぶり、自殺しようとするが、恐ろしくなってプールにダイブする。頂点でもどん底でも幻想に囚われ、自分を演じている彼には、本当に生まれ変わることなどできるはずもない。
しかしだからこそ、彼が聴覚を失ったことを完全に受け入れ、残された感覚で音を感じとるときに、感動が生まれる。それはまさに死と再生であり、彼は、伝説のDJから、場所にも金にも縛られないコスモポリタンに生まれ変わるのだ。 |
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◆スタッフ◆ |
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監督/脚本 |
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マイケル・ドース
Michael Dowse |
撮影監督 |
バラージュ・ボリゴ
Balazs Bolygo |
編集 |
スチュワート・ギャザード
Stuart Gazzard |
音楽 |
グラハム・マッセイ
Graham Massey |
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◆キャスト◆ |
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フランキー・ワイルド |
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ポール・ケイ
Paul Kaye |
ペネロペ |
ベアトリス・バタルダ
Beatrize Batarda |
マックス |
マイク・ウィルモット
Mike Wilmot |
ソーニャ |
ケイト・マゴワン
Kate Magowan |
ピート・トン |
本人
Himself |
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(配給:エイベックス・エンタテインメント) |
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