フランキー・ワイルドの素晴らしき世界
It's All Gone Pete Tong


2004年/イギリス=カナダ/カラー/92分/シネスコ/ドルビーデジタル
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(初出:「ぴあ映画別冊冬号」2006年)

伝説のDJの死と再生

 スペイン、イビサ島のクラブ・シーンに君臨した伝説のDJフランキー・ワイルド。彼の栄光と挫折が、関係者たちの証言や記録映像によって浮き彫りにされていく。クラバーを熱狂させたDJは、徐々に聴覚を失い、忽然と姿を消した。

 『フランキー・ワイルドの素晴らしき世界』は、いわゆるモキュメンタリー≠フスタイルで展開していくが、それだけでは終わらない。映画の中に再現されるフランキーの過去が暴走を始め、そんなスタイルを逸脱していくのだ。酒とドラッグに溺れる彼の内面では、現実と幻覚の境界が崩壊するばかりか、栄光と挫折が同じように無意味なものとなる。

 映画の冒頭で、人気絶頂のフランキーは、荊の冠をかぶったキリストとなってステージに現れ、特設プールに死のダイブをしてみせる。一方、聴力を失い、妻子にも逃げられた彼は、花火を巻きつけた冠(本人はダイナマイトだと思い込んでいる)をかぶり、自殺しようとするが、恐ろしくなってプールにダイブする。頂点でもどん底でも幻想に囚われ、自分を演じている彼には、本当に生まれ変わることなどできるはずもない。

 しかしだからこそ、彼が聴覚を失ったことを完全に受け入れ、残された感覚で音を感じとるときに、感動が生まれる。それはまさに死と再生であり、彼は、伝説のDJから、場所にも金にも縛られないコスモポリタンに生まれ変わるのだ。


◆スタッフ◆
 
監督/脚本   マイケル・ドース
Michael Dowse
撮影監督 バラージュ・ボリゴ
Balazs Bolygo
編集 スチュワート・ギャザード
Stuart Gazzard
音楽 グラハム・マッセイ
Graham Massey
 
◆キャスト◆
 
フランキー・ワイルド   ポール・ケイ
Paul Kaye
ペネロペ ベアトリス・バタルダ
Beatrize Batarda
マックス マイク・ウィルモット
Mike Wilmot
ソーニャ ケイト・マゴワン
Kate Magowan
ピート・トン 本人
Himself
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(配給:エイベックス・エンタテインメント)

 



(upload:2009/01/31)
 
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